ヒアリングループは、50年にわたり現在も広く利用されている補聴援助のための仕組みです。ヒアリングループから送信された音の信号を、テレコイルを備えた補聴器で受信することで、直接音を聞くことができます。FM周波数やBluetoothテクノロジーを活用した補聴援助システムもありますが、テレコイルを備えた補聴器をお持ちなら、ヒアリングループが施設されいる公共施設などでは、聞きたい音をより聞きやすくすることができます。
補聴器を使用しているか、まもなく購入することを検討している場合は、補聴器販売店にテレコイルの技術についても問い合わせてください。これらの小さな銅製のコイルは、ほぼ50年の間ほとんどの補聴器で搭載が標準的になっています。ヒアリングループと一緒に使用すると、音をマイクを介さずに補聴器に直接送ることにより、公共の場所で騒音のある場面でも聴取体験を劇的に向上させることができます。
「補聴器のマイクは比較的短い距離でしか働きません」 と、全米難聴者協会 (HLAA) でヒアリングループを推奨しているジュリエット・スターケンズ氏は言いました。「しかし、テレコイルとヒアリングループは補聴器装用者により良いきこえをもたらします。それは時には健聴者よりも良い聞こえになります」。
実際、テレコイルは非常に有用であるため、スターケンズ氏は、すべての補聴器が備えるべき4つの必須機能の1つであると考えています。(※編注:スターケンズ氏による4つの必須機能とはテレコイル、Bluetooth、充電式、見た目)
補聴器のテレコイルとは何ですか?
テレコイルは、Tコイルとも呼ばれ、補聴器に内蔵された目立たない巻かれた小さな銅線のことです。これらは、様々な音源からの電磁信号を受信することができ、一般に、ボタン操作で簡単に使用できます。
スターケンズ氏によると、この技術は新しいものではありません。テレコイルはもともとは補聴器に組み込まれており、固定電話からの電磁気信号を受信し、補聴器ユーザーが電話でよりよく聞こえるようにするためのものだったのです。「古いマーベル電話(マーベル、MaBellはAmerican Telephone & Telegraph Companyの製品)が存在していた頃は、たくさんの電磁気信号を発していました。」と彼女は説明しています。
今日の電話は、もはや電磁気信号の自然な発信源ではありませんが、中にはTコイル付き補聴器に対応するために、磁界を発生する補聴器対応 (HAC) 装置を含んでいるものもあります。
Tコイルつき補聴器はどのように入手できますか?
スターケンズ氏によると、補聴器メーカーの中には、補聴器を小型化するためにテレコイルを廃止したところもありますが、この機能は多くの耳かけ型補聴器で標準搭載であり、耳あな型オーダーメイド補聴器もオプションで対応できるものがあります。Tコイル技術を希望する補聴器ユーザーは、必要なプログラムを設定してもらったり、使用法についての指導を聴覚ケアの専門家に依頼する必要があります。補聴器の種類とスタイル、補聴器の技術については、こちらをご覧ください。
補聴器のループシステムとはどんなものですか?
ヒアリングループは、世界中で多くの公共施設に設置されている補聴援助システムであり、難聴者をサポートしています。この誘導ループシステムは、テレコイルを備えた補聴器によって電磁気信号を無線で捉えて音声に変換して耳に届けます。ループシステムを設定している施設内では、補聴器ユーザーがループ内にいてTコイル設定が有効になっている場合、そこで放送されている会話 (教会での説教、教室での講義、ステージでのパフォーマンスなど) は、補聴器のテレコイルに直接送信されます。
この機能は、補聴器の聴取範囲を広げるだけでなく、不要な背景雑音を除去し、聞き取りの理解と楽しさを高めます。
さまざまな聴覚援助システム(ALS)
米国障害者法 (ADA) のガイドラインのおかげで、裁判所、映画館、劇場、公立の教室などの公共の 「音声増幅のある人の集まるエリア」 では、補聴援助システム (ALS) を提供しなければなりません。施設では、設置するALSのタイプを選択できます。
- 誘導ヒアリングループシステムは、磁界を介して補聴器に音声信号を直接送信します。無線の磁気信号を提供するループは、施設内の部屋のカーペットやフローリングの下に部屋を囲むように設置されています。補聴器ユーザーは、補聴器のTコイルスイッチをオンにして、ループ内のどこからでも音声信号を受信できます。
- 赤外線システムは、音源、トランスミッタ(送信機)、受信機で構成されます。ほとんどの受信機はヘッドフォンまたはネックループになっており、施設のインフォメーションデスクで受信開始また受信解除をする必要があります。
- FMシステムは、FM送信機からFM受信機に送信される、ワイヤレス、低電力、FM周波数の無線伝送です。(補聴器専用のものの多くは日本国内では販売が終了になっています。その後継としてデジタル補聴援助システムがあり、ブルートゥース・2.4GHzの電波を使って専用マイクやスマートフォンからの音を補聴器と無線で接続する技術です。)
- スターケンズ氏によると、新設または改装された多くの空港や、教会、公共の図書館、医療施設で、より高い頻度でヒアリングループが設置されてつつあります。「ヒアリングループは公共の場で他の補聴援助システムを使うよりもずっと目立ちにくいのです」 と彼女は述べています。「メリーランド州は、州の助成事業にヒアリングループを設置することを義務付ける法律を可決したばかりです。インディアナ州とワシントン州も準備を進めています。これはほんの始まりにすぎないと思います」。
ニューメキシコ州も最近、Tコイルについて患者を指導することをオージオロジスト(聴覚士)に義務付ける法律に署名しています。
私の近くにあるヒアリングループシステムはどうやって見つければよいですか?
ヒアリングループ技術を提供する会場は、日本では右のようなシンボルマークが使用されています。(一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会)
多くの自治体でヒアリングループシステムの貸し出しを提供しています。
未治療の難聴がある場合
難聴があるために社会活動を楽しめないときに、家にこもらないでください。あなたの聴力を評価し、最善の治療法を勧めてくれる聴覚ケアの専門家に予約をして、あなたの聞こえが最善になるようにしてください。
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します
■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2021年11月19日の記事「How hearing aids help kids learn better」(Debbie Clason 寄稿)
https://www.healthyhearing.com/report/45927-Hearing-aids-in-loop
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
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記事監修者
田中 智英巳
デマント・ジャパン株式会社 アドバンスト・オーディオロジー・センター・センター長、ハワイ大学マノア校 Adjunct assistant professor, 静岡県立総合病院 客員研究員、ASHA認定オーディオロジスト、ハワイ州オーディオロジスト。■詳しいプロフィールを見る■