聞こえの問題がなかったとしても、人との会話には多くの集中力、エネルギー、ときに忍耐が必要です。難聴や、その他聞こえづらさを抱えた人々にとって、騒がしい環境や話のスピードが速すぎる友人たちの会話などはさらにコミュニケーションを難しくさせます。聞こえづらさを抱えている人—それがご自身や家族、友人や同僚であっても、より良いコミュニケーションのために今すぐ取り入れられるヒントをお届けします。
環境を選びましょう
聞こえづらさを感じる人々にとって、条件が整った環境は他の場所よりはるかに楽に会話ができると感じます。最適な環境選びのための確認ポイントとは?
- 部屋に十分な明るさがあることを確認します。難聴の人々は、多くの場合聞こえを補いコミュニケーションを改善するために、唇の動き、顔の表情、ボディーランゲージ、また相手のジェスチャーといった補完となる情報に頼っています。
- 騒音や反響音の少ないできるだけ静かな場所を選びましょう。私たちの耳と脳は、驚くべきことにほとんどの場面で、無意識に周囲の騒音を無視して聞きたい音を捉えることができます。一方で難聴があると、聞こえて来る過剰な騒音に苦労することがよくあります。足音の響く床、またカーテンのない窓のある小さな部屋などは音響が悪く、また声が歪む傾向があることに留意してください。
- みんなの顔を見やすいための工夫。グループでのコミュニケーションでは、場所選びは特に大切です。レストランなどでは、円卓を選びましょう。難聴の人が全員の顔を見られるように工夫することで、より円滑に会話が交わせます。
上記のヒントを使用した、会話に適した環境選びの例をご紹介します:
- 外食を計画する際は十分な明るさがあり、大音量のBGMがなく、音響環境へ配慮のあるレストランを選びましょう。以前足を運んだことがあり、騒音が大きすぎないことが分かっている店、絨毯やテーブルクロス、厨房が客席と離れていることなどもお店選びのポイントの一つです。
- もっとも賑わう金曜日または土曜日の午後7時頃のディナータイムを避けて、比較的静かな午後3時から午後5時の時間帯に、遅めの昼食または早めの夕食を選択するのも一つのアイデアです。
- 自宅のパーティなどで難聴を持つ友人や家族と会話をしたい場合には、みんなが集まる部屋とは別の静かな部屋も準備しておくこともお勧めです。テレビやその他の騒音源は(例えば台所の換気扇など)オフにしておきましょう。
難聴の問題があっても会話を弾ませるために心に留めておくべきこととは?
聞こえづらさにとらわれることなく、会話を弾ませるために心に留めておきたいチェックポイントをご紹介します。
- 手などで口をふさがない、またガムを噛みながら、または欠伸をしながら話さないこと。手話や読唇術を併用する聴覚障害者や難聴の方にとって、これは特に重要なポイントです。
- 別の部屋から、また相手に背中を向けて話さないこと。また、どんな場合でも大声で話しかけてはいけません。
- 難聴の方の近くに座る、または立って話しましょう。近づきすぎず、目の表情や口の動きなどにも焦点を切り替えやすい距離をはかってください。
- 片側の耳の方がよく聞こえる場合は、どちらの耳が聞きやすいのかを覚えておき、右側または左側のより聞きやすい側の耳に向かって話しかけましょう。
- 会話を始める前に、名前を呼んで注意を引いてください。気づいていない場合は、腕に触れる、または肩などをそっと叩くなどして注意をひきましょう。
- 住所や会議の時間といった特定の情報を伝えるときは、重要な情報を書き留めるか、または正しく情報が伝わっているか、相手に情報の詳細を繰り返してもらいましょう。
- 難聴を持つ参加者に注意を払いましょう。難聴の人は、聞き返すことに気恥ずかしさを覚えたり、周囲にいま話した内容を繰り返したり、詳細を説明してもらうことを諦めている場合もあります。困惑しているように感じたら機転を利かせて会話についてきているか確認しましょう。
- グループの会話では、複数の人の発言が重なることを避けましょう。
- 難聴の方を前に、あたかも本人がそこにいないかのように話さないでください。代わりに、どうぞここでのヒントを参考に、積極的に会話を交わしましょう。
難聴はコミュニケーションにどのように影響するのでしょうか?
時に、会話が途切れてしまうことがあるかもしれません。友人、家族、同僚との会話を弾ませる秘訣を教えます。
- いつもの声量で話します。難聴の方に大きな声で話しかけたくなりますが、これは相手に届く声を歪めてしまう可能性があります。
- 会話のトピックや伝わりにくいキーワードがあれば説明しましょう。会話の最中に話題が変わったときは、特に注意が必要です。
- 間違えやすい言葉や名前には注意しましょう。難聴の方にとっては、多くの子音が同じように聞こえます。「加藤さん」が「阿藤さん」に聞こえるなど誤解を招くこともあります。必要ならば紙に書いて説明しましょう。
- よりよい理解に役立つならば、ジェスチャーも使用しましょう。
- ゆっくり、でもはっきりと話しましょう。
- 伝わりにくい時は、言葉を言い換えましょう。
- 文章は短めに、あまり複雑ではないフレーズを使いましょう。
- 騒音など会話が伝わりにくいときは、場所を変えて話しましょう。
- 会話が中断してしまったら、会話を続けるために何かすべきことがあるか、率直に相手に聞いてみましょう。
難聴の影響とは
難聴は痛みを感じることもほとんどないため、聞こえづらさを感じてもそのまま我慢してしまう場合もありますが、問題の多くは正しく調整を行った補聴器の装用で改善が期待できます。もしご家族やご自身が聞こえの問題を抱えていたら、どうぞ耳鼻科での聴力検査をお勧めします。
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■英語版記事はこちらから
米国「Healthy Hearing」2019年12月23日の記事「Hearing impairment and communication」(US Healthy Hearing スタッフライター Joy Victory寄稿)
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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