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聴覚過敏とは?日常の自然な音を不快に感じる原因と治療・対処の方法

  • 公開日:2021.07.28
健康
掃除機

私たちが暮らしている生活環境は、数多くの音であふれています。普通はほとんど気にならないこれらの音が、人によっては過剰に聞こえられ、日常生活に支障をきたしてしまうことも。ここでは、そんな聴覚過敏の基礎知識や、治療・対処の方法についてご紹介します。

聞こえに関する症状は、見た目では知られにくいため、身の回りの方から誤解されやすいといえます。医療機関での治療と併せて、周囲の理解を得ながら、少しずつ対策に取り組んでみましょう。

 

聴覚過敏とは?

通常よりも聞こえが敏感になり、音量が大きく聞こえてしまう聴覚過敏。まずは、日常生活において聞こえのお悩みや不安を抱えていらっしゃる方とそのご家族へ向けて、聴覚過敏の基礎知識をお伝えします。

聴覚過敏の意味

聴覚過敏とは、周囲の音が過度に大きく聞こえて、苦痛や不快感を伴う状態にあることです。「感覚過敏」の一種とされています。感覚過敏では、外部から受け取る情報が過剰な刺激となるのが特徴です。聞こえに影響する聴覚過敏のほかにも、視覚・触覚・味覚・嗅覚などに対する過敏症が存在します。なお、聴覚過敏で反応しやすい音や不快感の程度には、個人差があるといわれます。できるだけ症状を軽減させるには、生活環境の調整や、周囲の方からの配慮などが必要です。

聴覚過敏で不快に感じやすい主な音

あくまで個人差がありますが、一般的に聴覚過敏の方は、尖った甲高い音を不快に感じやすいとされます。具体的には、日常生活で身近にある以下のような音です。

  • 人の笑い声
  • 金属音
  • ハイヒールで歩く音
  • 赤ちゃんの泣き声
  • キーボードを叩く音
  • ボールペンのノック部分をカチカチ鳴らす音
  • 掃除機の音
  • 電車の踏み切りの音

人によっては、上記をはじめとした周囲の騒音が、会話相手の話し声と同じレベルの大きさで聞こえてしまうこともあります。一方で、時計の秒針が動く音や家電が発する音のような、特定の非常に小さな生活音が気になってしまう方もいるようです。

聴覚過敏の主な原因

耳

聴覚過敏は、どのような原因で起こる可能性があるのでしょうか。ここでは主な原因や、それぞれの特徴について解説します。なかには病気が関係するケースもあるため、必要に応じて医療機関の受診をご検討ください。

耳の機能に影響を与える病気

耳の機能に影響を与える何らかの病気が原因となり、聴覚過敏が引き起こされる場合があります。

たとえば「顔面神経麻痺」では、大きな音の振動を直接耳に伝えないよう防ぐ役割のある「アブミ骨」が、麻痺により適切に動かなくなることも。顔の筋肉が麻痺すると、表情を作ったり顔面の一部を動かしたりしにくくなりますが、さらに聞こえづらさにつながるケースも見られます。

ほかにも「メニエール病」や「難聴」では、低下した聴力を補おうと脳が過剰に反応し、音を大きく聞き取ってしまうと考えられています。こうした難聴の回復後に起こる聴覚過敏に対して行われるのは、耳を音に順応させる「TRT療法」や、補聴器を使った治療などです。

脳機能に関する病気

通常、脳には雑音のなかから聞き取るべき音を選択して、注意を向ける仕組みがあります。ところが、「てんかん」のように脳機能に関する病気があると、神経細胞が過剰に興奮し、聴覚に異常が生じてしまうのです。音の選択ができず、ノイズが耳に入ってしまうことで、聴覚過敏が起こっていると考えられます。

発達障害

発達障害とは、脳機能の発達に偏りがあるために起こる障害のことです。自閉症スペクトラム(ASD)も発達障害に該当します。子供の場合、言葉の遅れや落ち着きのなさが見られたり、人間関係の構築が極度に苦手であったりして、発達障害が発見されるケースがあります。そんな発達障害の方は、聴覚をはじめとした五感からの刺激に過敏な傾向にあります。

ストレス

はっきりとした仕組みは明らかになっていませんが、ストレスが原因で聴覚過敏になる可能性があります。聴覚過敏のなかには心因性の症状もあることに留意しましょう。

聴覚過敏の治療方法と、日常生活での対処方法

ヘッドホンをつけた人

聴覚過敏で医療機関を受診する場合、耳鼻咽喉科のほか、神経内科や心療内科に通う必要があるかもしれません。専門家にご相談のうえ、ご自身に適した治療方法や、日常生活での対処方法を見つけましょう。

聴覚過敏の治療方法

聴覚過敏が疑われるときは、耳鼻咽喉科の医療機関を受診しましょう。医師の診察を受けて、耳に関する病気が原因と考えられれば、治療を始めることになります。一方で、もしも耳以外に聴覚過敏の原因が考えられるのであれば、適切な診療科をおすすめしてもらいましょう。場合によっては、神経内科や心療内科を受診することもあります。

日常生活での聴覚過敏の対処方法

イヤーマフや耳栓、ノイズキャンセリングイヤホンを使う

日常生活で発生する全ての雑音を遮断して静かな状態に保つのは難しいといえます。そのため、イヤーマフや耳栓といった周囲の音を聞こえにくくする防音グッズで聴覚過敏に対処するのも一つの方法です。近年では、便利な「ノイズキャンセリングイヤホン」などの商品も市販されています。こちらは、周囲のノイズをイヤホンに接続されたマイクが拾い、ノイズを打ち消す音を発生させる仕組みで遮音するイヤホンのことです。装着すると、一時的にノイズを聞こえにくくして刺激を減らす効果が期待できます。

周囲の協力を得る

身近な音によって引き起こされる聴覚過敏の症状を軽減させるには、ご家族をはじめ周囲の方からの協力が欠かせません。職場や学校で周りの方に説明して、配慮をお願いしておくと安心です。たとえば、特別にイヤーマフの使用許可をもらったり、なるべく音の少ない場所に座席を配置してもらったりするだけでも、仕事や勉強に集中しやすくなるでしょう。聴覚過敏は、見た目では症状が分かりにくいもの。ご自身の症状に対する理解を深めてもらうだけでも、より快適な生活を送ることにつながります。

十分な休息を取る

聴覚過敏の症状は、基本的に疲労が溜まると出やすい傾向にあります。そのため、ご自身がリラックスできる方法を見つけて、日頃からしっかりと休息を取るよう意識しましょう。我慢や無理をしすぎないよう注意しながら、ストレスと上手に付き合い、気持ちを落ち着けるコツを掴めると理想的です。

根気よく聴覚過敏の治療を続けましょう

医師

今回は聴覚過敏の基礎知識や、治療法・対処法をご紹介しました。聴覚過敏の症状は、医療機関での治療を継続しながら、日常生活で工夫をしたり、周囲の方から配慮してもらったりすると、少しずつ落ち着いてくる可能性があります。一般的には耳鼻咽喉科の医療機関を受診しますが、医師の指示に従って適切な診療科へ通いましょう。治療には長い時間がかかる場合もありますが、根気よく続けていくことが大切です。聞こえでお悩みの方は、お伝えした情報をぜひ参考にしてみてください。

  • 記事投稿者

    ヘルシーヒアリング編集局

    ヘルシーヒアリング編集局

    1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
    2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート

  • 記事監修者

    田中ちえみ

    田中 智英巳

    デマント・ジャパン株式会社 アドバンスト・オーディオロジー・センター・センター長、ハワイ大学マノア校 Adjunct assistant professor, 静岡県立総合病院 客員研究員、ASHA認定オーディオロジスト、ハワイ州オーディオロジスト。■詳しいプロフィールを見る■

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