人や動物に本来備わっている感覚機能のうち聴覚、視覚、触覚、嗅覚、そして味覚の五つについて昔から五感と呼ばれています。「聞く」「見る」「触る」「嗅ぐ」「味わう」、これらの感覚機能は年齢とともに低下していくことは否めないとされますが、いま持つ五感を守ってさらにはそれらを高めていくために、どんなことができるのでしょうか?第二弾の今回は「視覚」について。知覚する情報の割合のほとんどが視覚ですが、それだけが全てというわけでもなく、音などの刺激も人間の判断に影響するようです。
視覚~見ること~
米国カルフォルニア大学の調査によると、私たちが五感から知覚する情報の割合は視覚83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、そして味覚は1%と言われています*1。
目の役割
それでは、視覚をつかさどる目の仕組みはどうなっているでしょうか。ヒトの目には、カメラのレンズの役割をする角膜と水晶体があり、モノを見る時にこの水晶体の厚さを変えて厚くすることで近くにピントが合って見えるようになり、薄くすることで遠くにピントが合って見えるようになります。ピントを合わせる際に重要な役割を担うこの水晶体が硬くなり、水晶体の厚さを制御する筋繊維が弱くなるにつれて、近くにピントを合わせることが困難になります。光を調整する役割が瞳で、明るいと小さくなり、暗いと光が多く必要になるので大きくなり、目に入る光を調整します。周りの人は平気なのに、自分だけが眩しいと感じる場合には、目に何らかのトラブルを抱えている可能性があります。目がかすんだり、歪んで見えたりしたら、注意が必要です。黄斑変性症および緑内障の割合は、45歳から55歳の間で2倍になり、白内障のリスクは3倍になります*2。
見た目だけでは決まらない
一方国内の広告代理店が2006年に行った調査では、私たちが店頭で商品を選ぶ際に、男性が圧倒的に「見た目(67.5%)」を重視するのに対し、女性は視覚以外(44.3%)の感覚を重視する割合が高いとの結果がでました。この調査では、五感の感じ方は、店頭での商品選びにも影響します。例えば飲料を手に取るとき、それがお茶であれば「味」や「香り」が想像でき、さらにパッケージといった「見た目」も重視されるといった基準で選ばれるのに対し、ビールの購入においては製品パッケージの「見た目」と「味」や「香り」が想像できるといった基準要素に加えて、缶やビンを開けたり注いだりする際の爽快な「音」が目に浮かび、飲みたくなる衝動に駆り立てられることが、男女を問わず重要な選択基準になっていることが判明しました*3。
飲料メーカーなど販売する側もではすでにこのことに気づき、缶ビールのフタを開けて注ぐテレビコマーシャル、また、店頭のBGMやビールの試飲販売といったいわば五感を刺激する施策を行っています。
これらの結果から、私たちの日常では目から入る視覚情報が圧倒的であるものの、「そうだ今晩はビールを買おう!」そして焼き鳥屋に目を留め、漂う香りと脂が炭火に落ちる煙とジュージューといった音に「おかずは焼き鳥で決まり」など無意識のうちにその他の情報もよく活用しているということが言えます。
大切な視覚を守るために私たちができることとは?
- 定期的な運動は目への血流を維持します。(ただし聴覚を守るためには大音量の音楽を聴いたり流したりしながらの運動は避けましょう!)
- 十分な睡眠をとることは目に潤いを与え、また刺激物を取り除くのに役立ちます。
- 年齢とともに白内障などが生まれてきます、定期的な健康診断の受診や視力の検査は大切です。
- もう一つの一般的な目の悩みはドライアイです。年齢を経るごとに体が創り出す涙の量は減ってきます。目がゴロゴロしたり、疲れやすくなったりします。年齢だけでなくスマートフォンやPCによる目の使い過ぎも指摘されています、どうぞ眼科医を通じて最良の目の保湿方法を見つけ出してください。ドライアイへの対処は目のかすみを防ぎ、読書や運転を楽にします。
ここまで視覚についてお話をしてきました、本サイトは聴覚が司る聞こえの情報を主に伝えていますが、視覚に対し聴覚はより個人差の強い感覚かもしれません。聞こえを小さい音から順番にぼやける近視に例えると、難聴は音の高さによっては、小さな音であっても聞くことができ、また音が大きくても聞き取りにくいことがあります。聴覚、視覚いずれも耳鼻科医、眼科医をはじめとする専門家による、定期的な検査が大切な五感を守る鍵となります。
■参考文献
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート