
若者にしか聞こえないモスキート音というのが話題になったことがありました。街にたむろする若者を退散させるため、耳に不快なこの音を発生させる装置が設置されていたりするそうです。若者だけをピンポイントで狙えるのが便利なような気の毒なような…。今回はモスキート音にまつわる、若者には聞こえるが高齢者には聞こえない音のお話です。
若者にしか聞こえないモスキート音というのが一時期話題になりましたが、これに関してはいくら頑張って若者ぶっても徐々に聞こえなくなってしまうもので、自分の年齢を実感せざるを得なくなるものだそうです。
これは耳の老化によって起こるもので、耳の中にある音を電気信号に変える有毛細胞が長年の使用によって損傷を受けたことで、音に対する感度が鈍ってしまう現象だとも言われており、どんなに訓練しても気を付けても避けられない現象なのです。
この聞こえなくなる音の極端な例では、高齢となるとお風呂が沸いた時のお知らせ音、電子レンジの音、電子体温計の音などが徐々に聞こえにくくなるという現象があります。
ただし昔ながらの目覚まし時計や、黒電話などベルの音ではこのような現象はありません。
というのもアナログのベル音は単音に聞こえますが、実際には低音から高音まで幅広い音が含まれていることから、どの年齢の方にも聞こえやすいのです。
それに対し電子的に作られた体温計や電子レンジなどのお知らせ音は、もともと成人にとってもっともよく聞こえると言われる3000から4000ヘルツの音が設定されていることが多いそうです。
家電メーカーも「誰にでも聞き取りやすい周波数」ということで設定した音だったのですが、高齢になると徐々にこの周波数の音が聞こえにくくなってしまうということが近年になって判ってきたのです。

特に女性の方が高い音が聞こえづらくなる傾向が強く、夫には聞こえているのに奥さんには聞こえず、それで喧嘩になってしまうこともあるみたいです。
そのこともあって近年は家電メーカーも徐々に電子音を低い音に設定するようになりつつあり、平成14年にJIS(日本工業規格:現在は日本産業規格)が高齢者のために「家電の通知音は2500ヘルツ以上の高い音を使わないようにしよう」と新基準を定めています。
ただし高い音でも充分に聞き取れていた人の中には「低い音は刺激的でなく音が小さく聞こえる」という人もいて、年齢幅の広い家族の場合は難しい所もあります。
そしてこの新基準は強制的ではないので、そのままの音を使用している機器もまだ多くあります。
対応している機器として、体温計の終了音をピピッという音ではなく「メリーさんのひつじ」などのメロディが流れるように仕様変更しているものもあります。これは1曲の中に高い音や低い音が混在していることから、どの年齢にも聞き取りやすいという利点があるのです。
他に振動で計測完了をお知らせする体温計や、締め忘れを音と同時にライトが点滅することでお知らせする冷蔵庫なども開発されています。
耳の老化は40代から徐々に始まると言われていますが、若い頃からイヤホンなどで音楽を聴き続けているとダメージを受けやすくなるそうです。
音を聞くのが職業のミュージシャンの中にも長年大音量で音を聞いていたために難聴になってしまう方が出てくるのは、この耳の老化現象が極端な形で現れたものです。
そして今年、コロナ禍で自宅からリモート会議をする機会が多くなった人の中で、家族に気を使ってイヤホンを使い「なんだか音が聞こえにくくなった」という人が出始めているそうです。
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記事投稿者
杉村 喜光(知泉)
雑学ライターとして、三省堂『異名・ニックネーム辞典』、ポプラ社『モノのなまえ事典』など著作多数。それ以外に様々な分野で活動。静岡のラジオで10年雑学を語りテレビ出演もあるが、ドラマ『ショムニ』主題歌の作詞なども手がける。現在は『源氏物語』の完訳漫画を手がけている。 2022年6月15日に最新巻『まだまだあった!! アレにもコレにも! モノのなまえ事典/ポプラ社』が発刊。