補聴器は聞きたいときにだけ装用すればよいのでしょうか?音を認識して「聞く」役割は脳が担っているため、長らく音の刺激が少ない状態が続いていた脳が、再び音の刺激に慣れる必要があることから、日中は常に補聴器を使用することが推奨されています。ただし、多くの補聴器は防水性能がないため、シャワー、水泳の際には外す必要があります(就寝中も外します)。補聴器の使用が初めての場合、慣れるのが難しいと感じられるかもしれませんが、最初の間は毎日数時間から始めることがおすすめです。本稿では、補聴器に慣れるためのいくつかのコツをご紹介いたします。
補聴器は一日に何時間装用する必要がありますか?
一人で家にいるときでも、補聴器をつけて生活音を聞くことは脳を鍛えるために役立ちます。自身にとっての不要な音(冷蔵庫の音)と必要な音(蛇口の漏れ)を聞き分けるための脳のトレーニングになります。
補聴器を1日に何時間装用すれば最大の効果が得られるのかを知るために、米国聴覚学会の会長であるキャサリン・パーマー博士に伺いました。
「脳は、難聴の耳と補聴器をつけた耳という2つの方法で聞き取ろうとするのが苦手です。耳は脳への入り口であり、一日の一部で聞こえを閉ざしておくのは意味がありません」
起きている間ずっと補聴器を装着している人は、より良く聞こえるようになっているとパーマー博士は述べます。
補聴器を長時間外していると、以前よりも聞こえにくく感じられることがあります。これは、脳の聞き取りへの労力に変化があったためです。補聴器を使う聞こえに慣れた脳は、以前のように聞き取りに多くの労力を使わなくなっているのです。
難聴は脳を聴覚障害にさらします
難聴を抱えるほとんどの人は、さまざまな周波数(多くの場合、高い周波数)の音を聞くのに苦労しています。難聴を放置することで、特定の言葉や音の聞き取りへの脳の理解を難しくしてしまうことがあります。
聞こえが未発達な赤ちゃんを想像してみてください。
「聴覚、発話、言語を発達させたいと親御さんが思うのであれば、赤ちゃんの神経シナプスを発達させるために聴覚神経への刺激を与える必要があるでしょう」
「これは大人にとっても同様の問題として考える必要があります。聴覚への音の刺激が乏しくなれば、時間の経過とともに聴覚処理能力が変化する可能性があるのです」
パーマー博士はこのように述べます。
補聴器を常時使用しないということは、聴覚への音の刺激が少なくなる可能性があります。日中に補聴器を外している時間が長くなると、脳は聞こえにくい状態に順応し、聞くためにより多くの労力を費やすか、もしくはコミュニケーションをあきらめるかのどちらかになり、音を処理する能力に悪影響を与える可能性があります。
相談をするタイミング
補聴器の装用し始めでは、音が快適ではないことや、調整に時間がかかる場合があります。問題が解決しない場合は、かかりつけの耳鼻咽喉科または補聴器販売店にご相談ください。聞こえのニーズは時間の経過とともに変化する可能性が誰しもあります。必要に応じて補聴器を再調整してもらい、一日を通じて快適に使用できるようにしましょう。
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2024年3月13日の記事「Should you wear hearing aids all the time?」(Temma Ehrenfeld 寄稿)
https://www.healthyhearing.com/report/53141-Wear-hearing-aids-all-the-time
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート
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記事監修者
若山 貴久子 先生
1914年から100年以上の実績「若山医院 眼科耳鼻咽喉科」院長。■詳しいプロフィールを見る■