2月22日は猫の日とされます。「にゃんにゃんにゃん」の語呂合わせとともに「猫と一緒に暮らせる幸せに感謝し、猫とともにこの喜びをかみしめる記念日を」との趣旨で1987年に制定されました。可愛い猫の存在は私たちの日常をより豊かなものにしてくれますが、特に身近に猫がいる皆さま、愛猫の聞こえ、猫の難聴について考えたことはありますか?
犬だけじゃない、猫たちの繊細な聞こえについて
犬の聴力がすぐれていることは良く知られていますが、猫の聴覚も人間のそれをはるかに超えています。米国ルイジアナ州立大学のジョージ=ストレイン(George M Strain)博士によって行われ、2017年に米国の専門誌Journal of Feline Medicine and Surgery に掲載された研究によると猫の聞こえの周波数の範囲(ヘルツ:Hz)は45~65,000ヘルツ、一方で私たち人間では64~23,000ヘルツの間で音を聞いています。猫は低い周波数と高い周波数の双方で人間の耳には届かない音を聞いており、特に高い音の聞こえでは犬の聴力(67~45,000ヘルツ)も超えるとされその能力は数値に顕著に表れています。
うっかりテレビの音量を最大にしたり、または大音量で音楽をかけた瞬間に猫が驚いて身構えた、そんな瞬間はありませんか?これらは猫の本能による反応です。猫の外耳には32の筋肉があり、その筋肉を使い衛星アンテナのように耳を動かすことができます。独特の耳の形状をつかい10メートル先のネズミの足音さえも識別できる能力をもっています。猫にとっての聴覚機能は、視覚と併せて人生の中心にあるといっても過言ではありません。猫は細かい音の違いを非常に繊細に感じ取ることができ、野生の猫では敵から身を守り、飼い猫でも猫同士や他の生物とのコミュニケーションをはかります。猫は飼い主の声も聞き分けることができます。また母猫は子猫が迷子になったとしても遠くからその鳴き声を聞き分けることができます。
猫の聞こえの変化、難聴の原因とは?
人と同じように年齢を重ねることで猫の聞こえも少しずつ低下します。7〜11歳の頃一部の猫では、難聴や視力の低下などの症状を見ることがあります。聞こえの変化は、医学的な問題(腎疾患や糖尿病など)を示す兆候でもありますが、加齢による変化もあります。聴覚システムや聴神経の損傷に起因する難聴もあれば、耳垢、耳だれ、感染症、腫瘍といった理由でもおこります。私たちと同じように猫の健康は、生活の質(QOL)に大きな影響を与えます。特定の品種の猫(特に青い目の白い猫)の難聴は遺伝と関連しています(これらの多くは子猫のうちに発見されます)。
猫の聴力低下には兆候は見られるのでしょうか?
聴力低下を疑う初期的な兆候としては下記のようなものがあります。
- 通常反応を示す日常的な音に対して反応しない(餌の缶を開ける、袋を振るなど)
- あなたが近づいたときにあなたの足音を聞いていない
- 眠りが深い
- 非常に鳴き声が大きい
- 名前を呼ばれても反応しない
加齢による難聴はゆっくりと進行していくため、聴力が大きく低下するまで飼い主は聞こえの変化に気が付かないことがあります。猫の健康や聞こえにとって気になることがあれば迷わず獣医師、また動物病院などへご相談ください。
猫の難聴への対処について
難聴のタイプや耳のどの部分に原因があるかによって難聴への対処は異なります。感染症では、多くの場合抗生物質治療は聴力回復に役立ちます。過剰な耳垢では原因を取り除くことで聞こえが回復します。一方で難聴の原因が遺伝によるもの、また内耳の有毛細胞や聴神経の損傷で生じる感音難聴の場合について、現在のところ治療法は確立されていません。大切な猫のために新たなコミュニケーション方法を取り入れる必要があります。
あなたの大切な猫が難聴になったときにできることとは?
- 猫に近づく前に、猫があなたを見ていることを確認してください。電気をつけて部屋を明るくする、正面から猫に近づくなどシンプルな方法で大丈夫です。
- 人間と同様に、手を使ったシグナル(難聴の猫のための手話といったものがあります)拍手をする、足音をコツコツと立てるなど振動によるコミュニケーションを測る方法もあります。
- 香りの利用も効果的です。あなただけの香水やいつも同じアフターシェイブをつけるなどであなたが近くにいることを伝えることができます。
- フローリング(固い木の床など、条件が許すならばですが)の床では振動を通じて、人などが同じ部屋にいることを猫に伝えることができます。
- 光を使って、食事の時間など猫にとって大切な時間が来た事を伝えます。ライトのスイッチをオン/オフにする、懐中電灯やスマートフォンなどを利用してライトを点滅させるなどです。
- ボディタッチは素晴らしいコミュニケーション方法です。難聴を持つ猫のほとんどはなでたり、軽く触れたりするボディタッチに上手に反応します。ボディタッチで猫とのコミュニケーションを深めることができます。
猫とのコミュニケーションについてお伝えできるヒントは、「継続と一貫性」です。家族の誰もが同じメッセージには同じジェスチャーを行う、そして飼い猫がそのメッセージに慣れるまで続けるといったことが大切です。家族以外の誰かを家に招く際は、率直に猫の聞こえについて伝えましょう。上手に猫に近づく方法を伝えることで猫のストレスを減らして来客を迎えることができます。
冒険好きの飼い猫ならば、音が聞こえにくいことで車の接近などで起こ得るリスクを考える必要があります。うっかり外で迷子になってしまったときのために連絡先に加えて「耳が聞こえません」というタグを首輪につけておくのも一つの方法です。
聞こえの問題の有無にかかわらず飼い主とのふれあいは猫にとってとても大切です。また難聴を抱えることで高まる猫のストレスを和らげるためにはより一層深いコミュニケーションが必要です。ペットとの簡単なゲームや手のシグナルや表情を読み取ったりすることで理解が深まり、猫と飼い主との双方によりよい効果をもたらすことができます。猫たちの聞こえや精神面での健康のためにも普段からさまざまな方法を試してみてください。
いかがでしたか?2月22日の猫の日にちなんで、猫の聞こえについてのご紹介でした。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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