補聴器をつけていることを、周囲の人に気づかれたくない……そのようなニーズをお持ちの方も多くいらっしゃいます。補聴器には多くのタイプやスタイルがあるなかで、もっとも小さく目立ちにくいスタイルがIICです。本記事ではIICを中心に目立ちにくい補聴器についてご紹介します。
補聴器を初めて装用する方は、 補聴器をつけていることがわからないものを選ぶ方が多いと思います。このタイプの補聴器は外耳道の奥に装着するので、外からは見えにくくなります。
補聴器が外から見えないことを重視してしまう理由も理解できます。補聴器はまだ私たちの社会ではあまり良い印象ではなく、老化のサインとして受け取られがちだからです。ただ、これは補聴器の問題にするのではなく、難聴に対処するためであることを忘れてはなりません。補聴器を装用することで、「なんて言った?」 といつも聞き返したり、誰かに大事な質問をされた時に笑ってごまかしたり、わからないのにうなずいたりする必要はなくなります。
とはいえ、着けていることが自分しかわからない補聴器を強く好まれる方もいるでしょう。もしそうであれば、小さくて見えない補聴器として知られているIICがおススメかもしれません(CICとして知られているスタイルの補聴器も外耳道の中に装用しますが、装用する位置はそれほど深くありません。)
実を言うとCICスタイルは誰にでも適しているわけではなく、特に子どもや重度の難聴の方には適していません。軽度から中等度難聴の方に最も適していると言えます。聴覚ケア専門家は、他の要因 (手先の器用さ、テクノロジーのニーズ、ライフスタイルなど) も考慮した上で、補聴器を推奨します。
IIC補聴器の中には何が入っているのでしょうか?
その小ささを考えると、IIC補聴器はトウモロコシの粒くらいの大きさの装置に多くの技術を詰め込んでいます。ほとんどのモデルには次のものが含まれています。
- 音を拾うマイク
- 音を処理するマイクロプロセッサ
- 音を伝えるアンプとスピーカー
- 充電できないタイプの取り外し可能なバッテリー。
外観:ほとんどの補聴器メーカーは、IIC補聴器をより見えなくするために、肌の色とは異なる色のシェル (外面) を販売しています。音量を変更したり、設定を変更したり、補聴器の音をミュートしたりするためのプッシュボタンがついているものもあります。また、 「オン/オフ」 スイッチや、空気を通すための通気口、補聴器を取り出すためのテグスもついています。
そして、補聴器の左右を見分けることは重要なので、識別ができるように青色のドットや文字がついていれば左、赤色は右というように決めています。
見えない補聴器の長所
- 通常、目に見えないくらい目立たない。
- 鼓膜近くに補聴器を装用するので音質が良い
- 風切り音を拾いにくい
- 聴診器を使用する医療従事者や、電話のヘッドセットやヘルメット/保護具を装着する方など、耳や頭に物をつける必要がある人に便利
短所
- 高度または重度難聴の方が必要とする十分な音の大きさまでは増幅できない
- 成長に伴い耳の大きさが変わるため、子どもには使用できない
- 場合によっては、 「閉塞感」 を感じることがある (ほとんどの人は閉塞感に慣れる)
- 電池は頻繁に交換が必要
- テレコイルなどのカスタマイズ可能な機能や接続設定が少ない
- 特に手先の器用さや視力に問題がある場合、補聴器の脱着が難しい
- 耳垢や湿気によるダメージを受けやすい
IIC補聴器と同じような補聴器モデル
場合によっては、聴覚ケア専門家はIIC補聴器ほど小さくない、目立たない他の耳あな型補聴器を推奨することがあります。カナル(ITC)、ハーフ(ITE)、フル(ITE)補聴器などがあります。
IIC補聴器の一般的なブランド
オーティコン、スターキー、フォナック、GNリサウンドなどの主な補聴器メーカーで取扱いがあり、オーティコンでも見えない補聴器がラインナップされています。
IIC補聴器に関するよくある質問
一番見えにくい補聴器はどれですか?
上記で紹介したモデルはすべて、周りの人からは見えにくい補聴器になります。IIC補聴器は特にサイズが小さく装用位置も外耳道の奥なので、見えにくさを重視した作りになっています。
IIC補聴器の音質は良いのでしょうか?
はい、音質は優れている傾向があり、耳かけ型モデルと類似しています。
耳にフィットするかどうかはどうすればわかりますか?
聴覚ケア専門家が外耳道を見て、適切なサイズを選択し、うまく耳にフィットするようにします。試聴のための貸出を行っている補聴器販売店がありますので、そちらを活用して確認するのも良いでしょう。試聴のための貸出は、無料貸出、有料貸出、レンタルなどがあり、試聴できる期間もさまざまありますので、詳しくは補聴器販売店でご確認ください。
メンテナンスは必要ですか?
バッテリーの交換方法や、耳垢の除去やフィルターの交換などの補聴器のクリーニング方法を学ぶ必要があります。こういった作業を簡単にできるように、補聴器にはマルチツールがついています。通知音が聞こえるので、バッテリーが切れそうになったらすぐにわかります。
必要に応じて音の設定を調整してもらえるように、聴覚ケア専門家との予約を必ず取っておいてください。環境やライフスタイルによっては、適切に補聴器を調節するために複数の調整が必要になることもあります。
どのようにして脱着するのですか?
補聴器の先端を外耳道に入れ、補聴器を外耳道の奥に入れる時に耳介をそっと後ろに引っぱります。そうすると耳の中に楽に収まります。取り外すときは、取り出しテグスや補聴器をゆっくりと引っぱってください。
値段はいくらぐらいでしょうか?
補聴器の価格帯は幅広く、現在主流のデジタル補聴器では片耳で13万円〜50万円程度です。
IIC補聴器はどこで購入できますか?
IIC補聴器はお近くの補聴器販売店で購入可能です。
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2022年10月17日の記事「All about: Invisible hearing aids」(Joy Victory 寄稿)
https://www.healthyhearing.com/report/53394-Invisible-hearing-aids
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
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記事監修者
田中 智英巳
デマント・ジャパン株式会社 アドバンスト・オーディオロジー・センター・センター長、ハワイ大学マノア校 Adjunct assistant professor, 静岡県立総合病院 客員研究員、ASHA認定オーディオロジスト、ハワイ州オーディオロジスト。■詳しいプロフィールを見る■