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補聴器の電池の性能をできるだけ引き出すためできること

  • 公開日:2019.01.30
補聴器 技術 ヒント
防寒で着込む女性

補聴器は家族や大切な人たちの声をよりはっきりと届けるだけでなく、緊急時のサイレンや身近な電子レンジの「チン」という音まで、さまざまな通知音の聞き分けを助けます。補聴器の装用によって映画館や劇場など外出が増えたという方もいるかもしれません。日々進化する補聴器技術を除けば補聴器ユーザーの方にとって、もっとも関心が高いことは補聴器を動作させる電池の存在かもしれません。たとえば、電池は冬の寒い時期、性能が低下することはご存知ですか?本稿では補聴器用電池の力を最大限に引き出すヒントをお届けします。

電池の取り扱い

補聴器の電池は非常に小さなものですが、補聴器を使う際の生命線となります。
皆様の中には、クォーツとも呼ばれる電池式の腕時計が一般的になる以前の、腕時計のネジを巻くことを日課にしていた当時のことを覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。
現在の補聴器では充電式も徐々に増えていますが、市販の補聴器の多くは従来からの使い捨ての専用電池、空気亜鉛ボタン電池(空気電池)が使用されています。

電池の技術も大きく前進している一方、どの電池も注意深く取り扱っていただく必要があります。補聴器の電池についても最大限にその性能を発揮させるために、特に次のことをご注意下さい。

  • 電池交換時には、手をよく洗ってください。
    手についた汚れや皮脂が電池に移ることで補聴器性能を低下させることがあります。
    補聴器への電力供給のために必要な接続を妨げかねないだけではなく、音の出口や補聴器のベントが詰まることで、補聴器の音を弱めたり、音のゆがみが生じる可能性もあります。
     
  • 今日の補聴器用電池の多くは水銀を含まず、無害な廃棄物と見なされていますが、多くの補聴器販売店では電池の回収を行っています。
    回収された電池は有効にリサイクルされます。(補聴器用の電池の廃棄は自治体によっても異なります、お住いの自治体にご確認ください)
     
写真:空気電池
写真:空気電池

電池の保管について

補聴器用電池は、電池サイズや補聴器の出力レベル、携帯電話などとのワイヤレス接続など使用方法によっても電池寿命は異なりますが、一般には3日前後から20日程度お使いいただけます。
多くの補聴器ユーザーの方々と同様に、皆様も予備の電池を1~2パックお手元にお持ちではないでしょうか。
しかし、それらの最適な保管方法についてはご存知でしょうか?
ここでもいくつかのヒントをお伝えします。

  • 補聴器の電池はお子さんの手の届かないところに、また医薬品類とは別に保管ください。
    全米小児科学会(American Academy of Pediatric)によると、毎年3,500件以上の中毒症状が報告されています。
    補聴器用電池を含むボタンサイズの電池には、唾液など体液と混合されたときに電流を生成する金属が含まれています。
    この電流によって化学やけどの症状がおこり、わずか2時間のうちに食道や内臓を損傷してしまう可能性もあります。
    国内でも消費者庁と国民生活センターが特に乳幼児の誤飲に対し注意を促しています。
     
    独立行政法人国民生活センター: 乳幼児(特に1歳以下)のボタン電池の誤飲に注意!-重症化することを知らない保護者が6割も!!- 2014年6月18日
     
  • 電池は比較的涼しく乾燥した場所に保管してください。
    適正な温度を越えた場所では、エネルギーの損失、電池漏れ、破裂といった原因になります。
    また、電池を冷蔵庫で保存することにメリットはありません。
    実際には、電池パッケージ内で結露が発生し電池寿命が短くなる可能性があります。
     
  • 買い置きなどの電池はお買い求めいただいた順番にご使用ください。
    ほとんどの亜鉛空気ボタン電池は、乾燥した環境で常温保管した場合、最長3年間使用できます。
    ほとんどのメーカーは、パッケージ上に使用推奨期限を明記しています。
    先入先出、つまり買ったそばから新しいパッケージを使用した場合、保管している予備の電池が古くなりすぎて補聴器への電力供給が低下することがあります。
    非常用持ち出し袋などの電池の使用推奨期限についてもご注意ください。
     

電池寿命をできるだけ長く持たせたい

重要なイベントの最中に補聴器電池が切れてしまうことほど、いらだたしいことはありません。
補聴器が常に最適に動作するように下記を参照してください。

写真:空気電池
写真:©healthyhearing.com
  • 補聴器を使用しない時は電池ぶたを開け電源をオフにし、電池は取り外してください。
    就寝中は電池ぶたを十分に開き、補聴器はドライケースなどに格納してください。
    ドライケースは余分な湿気を取り除き腐食を防ぎます。
    また、電池はドライケースに入れないでください。
     
  • 使用する直前まで、電池からシールをはがさないでください。
    補聴器用電池のほとんどは大気中の酸素によって亜鉛を酸化させることによって発電します。
    シールをはがすと、電源セルが酸素に触れることで電池から発電がはじまります。
     
    注意:一度はがしたシールを貼りなおしたとしても電池の消耗は停止しません、シールをはがした後は電池を使い切るまでお使いください。
     
  • 電池シールをはがした際は少なくとも1分間待って、補聴器に電池をセットします。
    これにより、補聴器の電源が完全に入り、補聴器はその性能を最大限に発揮できます。
     
  • 電池は適切に持ち運びましょう。
    硬貨やクリップといった金属製品と一緒に財布やポケットに入れないでください。
    接触による放電により電池寿命を短くさせる可能性があるとともに液漏れや発熱などの原因となります。
    可能であれば電池のパッケージごとお持ちください。
    難しい場合は、しっかりと蓋がしまる小さなプラスチック容器などをご使用ください。
     
  • 浴室など湿度の高い環境、また日中などに極端に温度が高くなる車のダッシュボードなどへ電池を置いておくことも電池寿命が短くなる原因につながります。
     

冬場の電池の取り扱い

冬の寒さは、補聴器の電池にも影響を与えます。
冬の冷たい空気の中では空気亜鉛電池が放電する電圧が常温の時よりも低くなり、補聴器の動作時間が短くなります。
気温や室温の低い場所で電池をお使いの際や、電池が冷たいときは体温などで電池を温めてからご使用下さい。
その他にどのようなヒントがあるでしょうか?

  • 帽子やマフラー、スカーフ、耳あては聞こえだけではなく、補聴器も守ります。
    とは言え、風や雨、そして冷気や凍てつく寒さは電池寿命を早める要因となりますが、寒さに負けまいと、汗をかいてしまうほどの過度な防寒対策は補聴器の結露の発生にもつながりますので注意が必要です。
     
  • 補聴器の電池は湿気を嫌います。
    結露に対する効果的な解決策として、補聴器を外した後は、電池を外して補聴器をドライケースに収納ください。
    また補聴器に汗カバーを装着する方法もあります。
     
  • 室内での補聴器使用時には、部屋の換気も電池の性能と関係があります。
    冬季、特に石油ストーブやガスヒーターといった化石燃料をお使いの場合、空気中の二酸化炭素の影響を受けて電池寿命が短くなります。
    電池の交換時にも暖房器具から離れ、常温の風通しの良い場所で電池交換を行いましょう。
    シールを外した際に亜鉛空気電池は空気を取り込み発電をはじめますが、二酸化炭素の多い空気は、電池の劣化を早めます。

終わりに

補聴器の電池が性能を果たせないことで補聴器のメリットが十分に得られないことは非常に残念なことです。
補聴器を毎日お使いいただき、身体及び精神面でのメリットを最大限に享受いただくことを願っています。
補聴器の操作や機能、電池などについて、また聞こえの変化を感じサポートが必要な際はどうぞ、お買い上げの補聴器販売店へお気軽にご相談ください。
補聴器専門スタッフはお使いの補聴器をできるだけ長く良い状態でお使いいただけるようユーザーの皆様をサポートするパートナーです。

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■参照サイト
一般社団法人日本電池工業会:補聴器用空気電池の使用上のご注意
 

■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
 

■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2017年7月18日「How to get the most from your hearing aid batteries」

  • 記事投稿者

    ヘルシーヒアリング編集局

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