現代の生活では、聞こえが悪くなったら補聴器を使うことができます。しかし補聴器は電子機器。ずっと昔の電気がなかった時代は、人はどのようにして聞こえを補っていたのでしょう。そもそも補聴器はあったのでしょうか?今回はラッパ型からはじまった補聴器の歴史に思いをはせてみましょう。
補聴器の起源=欧米で長く愛用されていた「ラッパ型」の集音器
私たちは小さい音や遠くの音などを聞こうとするとき、自然と手を耳に添えることがあります。これは音をよく聞くための最も単純で有効な方法。聞こえを改善するために人類が最初に行ったアクションと言われます。
では、聞こえを改善する物「補聴器」はいつ頃登場したのでしょう。
私たちの祖先が使った最初の補聴器は、中が空洞になっている動物の角や貝殻、木片などだったと言われています。角笛などを耳に当てると音が大きく聞こえることに偶然気づき、音を集める道具「集音器」として利用していたと考えられています。
その後、欧米で長く用いられたのが、耳に当てる部分が細くて音を拾う部分が広い、ラッパ型の集音器です。
16世紀頃に登場し、17世紀になるとさまざまなデザインアレンジがされるようになりました。その後、時代とともに改良され、素材も金属などに変わっていったものの原理はほぼ同じで、まだまだ十分な機能を得ることはできませんでした。
補聴器を大きく進化させたのは、1876年のグラハム・ベルによる電話の発明だったと言われています。後にこの技術を応用して、電気式の補聴器が誕生したのです。
ちなみに、日本に補聴器が入って来たのは江戸時代と言われています。世間に広く市販されるようになったのは戦後のことです。
1900年代、デジタル化が補聴器に革命を起こす
20世紀になると真空管増幅器を用いた補聴器が登場し、性能が格段にアップしました。トランジスタを使用した比較的小型の補聴器も開発され、補聴器の普及が急速に進みます。補聴器本体は首からかけたりポケットに入れイヤフォンと組み合わせて使用するポケット型補聴器や、耳の後ろにかける耳かけ型補聴器などもこの頃に誕生しました。
20世紀の終わりになって、補聴器の歴史で革命が起きます。超小型コンピュータ(ICチップ)を搭載したデジタル補聴器の登場です。コンピュータ処理をすることで補聴器はさらに小型化し、性能も画期的に向上しました。
2007年頃にはワイヤレス通信機能を持った補聴器も登場。補聴器が携帯電話といった外部機器と連携することで、これらの機器からの音を補聴器へワイヤレスで届けたることが可能になりました。現在までに補聴器の音量をスマートフォンで調節したり、MP3などの音楽プレーヤーとワイヤレスに通信することは、多くの補聴器製品ですでに一般的な機能になりつつあります。
そして現在、補聴器にさらなる新しい波が来ています。それはインターネットとの接続です。
2016年にオーティコン補聴器から世界初のインターネットに接続可能な補聴器「Opn(オープン)」が登場。国内外の著名な企業が参加するウェブサービスの一つであるIFTTT(イフト)との組み合わせで、Eメール受信時に補聴器にお知らせが届いたり、自宅のセキュリティシステムのオン・オフの通知を補聴器で受けるなど、今までには考えられなかった使い方もできるようになりました。補聴器の可能性は、今後ますます広がっていくことが期待されています。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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