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補聴器とうるさい背景騒音:その戦いを制するには?

  • 公開日:2020.05.27
補聴器 ヒント
雑踏

声や音を聞くときは、私たちは1つの音源に焦点を当てて聞き、その他のうるさい背景騒音(バックグラウンドノイズ)、たとえばにぎやかなレストランでのがやがやとした音を自然に無視しています。しかし難聴があったならば、これは非常に困難になります。補聴器はいかに背景騒音を処理しているのでしょうか?

初めて補聴器を使うと、これまで感じていなかった別の問題が生まれるかもしれません。以前は気にならなかった、車のクラクションから、エアコンなどの家電製品が生み出すブーンといった日常のあたりまえのノイズが突然聞こえるかもしれません。現代社会はノイズに満ちているので、たくさんの音に圧倒されるかもしれません。

にぎやかなレストランなどは特に悩ましい場所かもしれません。(アメリカ人は平均で週に五回外食をします。)レストラン格付け調査の一つであるザガットが2018年に米国で行った調査によると、レストランに対する不満の第一位に料理ではなく、騒音が上げられました。

街が昔よりうるさくなった、そう感じているのはあなただけではありません。公共の場は喧噪が大きくなっています。米国の著名な新聞であるニューヨークタイムズは2012年にこの問題を取り上げ、市内のレストランやバー、さらには様々な店やスポーツジムなど37か所の騒音を測定しました。その3分の1は非常に騒がしく、従業員の聴覚を危険にさらしていると報告されています。日本においても近年、騒音は社会問題の一つでもあり、環境庁は、“お互いの思いやりで騒音のない社会を”として、生活騒音に対する啓発啓蒙のためのハンドブックを発行しています。

騒音にいかに立ち向かうべきなのでしょうか?いくつかの方法がありますが、補聴器は選択肢の1つであり、追加のオプションを提供します。あなたの耳はその昔炭鉱で毒ガス検知の役目を果たした敏感なカナリアのように、騒音公害を拾っています。補聴器を外したい衝動に負けないで、その代わりに、補聴器の機能と使い方について学びましょう。

補聴器を外したい気持ちに打ち勝ち、補聴器の機能を使いこなしましょう

補聴器はうるさい背景騒音を抑えることができます

波形

両耳に難聴がある場合に、音源を区別して不要な騒音をより良く抑えるには2つの補聴器が必要です。先進の補聴器テクノロジーでは、背景騒音の低減など聞き取りを高めるためのさまざまな設定をスマートフォンから選択できるようになりました。これはデジタル信号処理(DSP)と呼ばれ、背景騒音を特定してその音量を下げるように設計されています。補聴器本体には指向性マイクと呼ばれるものも標準で装備されています。たとえば、コンサートに行ったり、教室で受講している場合など、このマイクを使用して、後ろよりも、前から来る音により焦点を合わせる設定を選択することができます。

補聴器の音量調整はテレビの音量調整とは異なります

リモコン

あなたの補聴器にはボリュームコントロールも搭載されていると思いますが、「テレビのボリュームコントロールと同じものと思わないでください」と米国オハイオ州でクリニックを営み補聴器専門家で業界におけるベテランであるティム=クロス氏は述べています。 テレビは、すべての音量を等しく上げ下げします。一方で補聴器のボリュームコントロールでは、高周波帯域にある小さな音を上げたり(または下げたり)する調整を行う傾向があります。この音域の音は多くの人々にとって聞き取りが難しくなりがちな音です。

しかしながら、多くの会話音は低周波にあるため、この帯域の音量を上げると、実際には会話が聞き取りにくくなる場合があります。「音に対してどのように感じるか、それがあなたにとって現実です」とクロス氏は語ります。試聴したり、また補聴器専門家とよく話すことで、より良いガイドを受けてください。またiPhoneやスマートフォンなどとワイヤレスで接続が可能な補聴器であれば、専用のアプリなどと組み合わせることで、スマートフォンなどからも補聴器の音量調整ができます。これも選択肢の一つです。

テレコイルとヒアリングループ

ヒアリングループのロゴマーク

お使いの補聴器にはテレコイル(Tコイル)が搭載されていますか?補聴器のテレコイル機能は、ヒアリングループ(旧称:磁気誘導ループ)の利用が可能な場所ならどこでも使用いただけます。テレコイル機能の設定をオンにすると、多くの公共の場所で、補聴器に送信されるワイヤレス信号を介し施設のオーディオシステムで放送される音声を聞くことができます。このオプションを使用すると、ヒアリングループの設置のある劇場や映画館などでの音声や空港、電車、地下鉄の駅でのアナウンスなどをより理解しやすくなります。

耳を訓練して、スピーチ(言葉)と背景騒音を区別する

ご自宅のコンピュータまたは電話などでエクササイズプログラムを使用して、音声とノイズをより楽に区別する方法を学ぶことができます。 米国で2015年に行われた調査では、19年にわたる聴覚学の臨床専門家であり、ケンタッキー大学でコミュニケーション科学および障害の学科を率いるアン=オルソン(Anne Olson, a clinical audiologist, head for the Department of Communication Sciences and Disorders at the University of Kentucky)は、その一例として「Angel Sound アプリ(英語版のみ)」は広範な試験を経たものであるとしています。

外食の際には騒音に詳しい人になる

レストラン

米国のレストラン評論家アダム=プラット氏が「すさまじい騒音の到来(Great Noise Boom)」とも呼ぶこの流れは90年代後半に始まりました。高級レストランであっても、これまで消音の役割を果たしていたカーペットやテーブルクロスを取り除き、テーブルのスペースをこれまでより小さく、そしてバーコーナーは大きく取り、継続して耳を晒すには危険とされる85デシベルを超える90デシベル以上の強いビートの曲を流し始めました。レストラン評論家としては難しいところですがプラット氏は、「食べることが仕事である私たちにとって、難聴は例えば鶏の骨で窒息するのと同じように、職業上の危険である」と騒音の危険性について発言したことは大きな反響を呼びました。

静かなレストランを探しましょう

米国国内ではスマートフォンのアプリ「サウンドプリント(SoundPrint)」通じて訪れたレストランの騒音レベルを報告することができます。このアプリの開発者グレゴリー=スコット=ファーバー氏(Gregory Scott Farber)は、髄膜炎にかかったことからの永続的な難聴を抱えていました。彼自身がデートのためのレストランを探していたときにこのアプリのアイデアを思いつきました。このアプリでは、収集したデータに基づいて、音の大きさである「デシベル測定」を行い、報告ができます。そして全米11の都市の静かなレストランリストを検索できます。

ファーバー氏は、2015年から2年にわたり本アプリを用いた、ニューヨークのマンハッタンの2,376軒のレストランの騒音に関する調査に加わりました。結果的に賑やかな時間帯において31%のレストランと60 %のバーでは常連客はもちろん、そこで働く従業員にとっても聴覚に影響を及ぼしかねないレベルの騒音レベルに達していることが分かりました。

ファーバー氏は、中華料理、インド料理、日本料理のレストラン(一部の居酒屋を除く)は、概ね静かである可能性が最も高いことも報告しています。カーペット、植物がある、また隣との間隔の広いテーブルも、音響の観点から良い目安といえます。国内のレストラン検索サイトでも「デートに使う」「大人の隠れ家」「静かに飲む」「個室」といった目的別のこだわり条件を備えたサイトが増えてきています。賑やかさの観点から事前に口コミを見る、またレストランに事前に電話で問い合わせてみるのも一つのアイデアです。

レストランでの夕飯は早めの時間帯に

一般に夜7時より前の時間帯であれば、レストランは客も少なく静かです。ふだん賑やかな店では午後5時の時間帯を試してみてください。またレストランのスタッフに比較的静かな席について相談しましょう。バーコーナーやスタッフが使い終わったお皿を集めたりする場所などから離れた、静かなテーブルを用意してもらえるかどうか尋ねてみましょう。座席につく前に、照明をチェックして、同伴者の表情が見えることを確認します。相手の表情が見づらい、またお酒の入ったグループ客が近くにいる場合は、他の席へ移ることができるかについても相談してみましょう。BGMが特に大きい場合は、音量を下げるようにお願いしてみてください。難しいと言われた場合は、レストランの責任者に相談してください。時間はかかったとしても、レストランのオーナーも、私たちが料理のためだけにレストランを訪れるのではなく会話も大切な一部であることに気づいてくれるかもしれません。

あなただけではありません:騒音公害は世界的な問題です

騒音公害は誰にとっても厄介です。バーで流れる音楽の音量を下げられないかと尋ねてみることは、騒音公害と戦い、すべての常連客とそしてそこで働く従業員を助けることにもつながっています。また、Tコイルを駅や公共の場で使用することで、反響音などで聞こえにくいアナウンスの内容を、難聴がない旅行者に伝えてあげることができるかもしれません。

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本記事はHearinglife.comにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的に、日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhearinglife.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、heatlhyhearing.comが指定する執筆者または提供者に帰属します。

■英語版記事はこちらから

米国「Healthy Hearing」2019年9月18日の記事「Hearing aids and background noise: Overcoming the battle

米国版記事寄稿:Temma Ehrenfeld:Ehrenfeld氏は、心理学と健康分野において受賞歴のあるジャーナリストです。Ehrenfeld氏の執筆記事は米国の著名な新聞、雑誌、ウェブサイトに掲載されています。Ehrenfeld氏に関する詳細は、Psychology Todayブログ「Open Gently」も参照ください。

  • 記事投稿者

    ヘルシーヒアリング編集局

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