補聴器の技術は基本的なものから高度な技術まで多岐にわたりますが、いずれの技術も急速に向上しており、これまで以上のメリットをユーザーへお届けできるようになっています。ここでは、補聴器の基本技術や代表的な機能などについて学びましょう。
補聴器技術は過去数十年にわたり大幅に向上してきましたが、補聴器の基本構造にはそれほど大きな変化はありません。補聴器は主に5つの基本的部品となるマイクロフォン(音の入り口)、アンプ(増幅器)、スピーカー(音の出口)、電池、そして補聴器の心臓部となるコンピューターチップ(プロセッサ)からできれいます。
デジタルの躍進と共に、これらの基本的な部品はより洗練されたものへと進化してきました。実際、現在市販されているほとんどの製品はデジタル補聴器です。デジタルとは、すなわち電子的に音を処理して耳へと届けます。
デジタル補聴器では、音信号はアナログからデジタルへと変換されてから処理されます。補聴器で増幅された音はデジタルからアナログに再変換されて耳に届きます。デジタルの特徴として複数の声や音、また「騒音を抑える」「声を増幅する」といった複数の処理機能を並行して効率的に実行できます。
補聴器技術の核心は、コンピューターチップ(プロセッサ)と呼ばれる部品にあります。今日のコンピューターチップは、いわば小型コンピュータの心臓部ともいえ、技術発展とともに、より繊細なプログラム設定が可能になりました。
コンピューターチップの性能は補聴器の価格差に関係します
基本機能に特化したお求めやすいものから高度な音声処理が可能な補聴器まで、これらはコンピューターチップ(プロセッサ)の性能に基づいて分類できます。技術革新によって、メーカー各社の先進製品では基本機能に特化した製品でも、過去の世代の高機能製品を越える多くのメリットをお届けすることができます。
補聴器専門家、専門スタッフは、ユーザー一人ひとりの聴力、年齢,使用経験などに合わせて、必要な音の増幅を正確に調整します。聞こえは非常に個人差が強いため、音の感じ方や日常のニーズに合わせた微調整を加える、また特定の場面で使用するための追加的な機能やプログラムの追加設定などもできます。
補聴器の一般的な機能について
チャンネル
チャンネル数とは、補聴器に入力される音信号を、周波数帯ごとにどれだけきめ細かく調整できるかの度合いを表しています。補聴器のチャンネル数が増えると、周波数の違い、音の高低など、補聴器をユーザーの好みに合わせてより柔軟に調整することができます。
指向性機能
指向性マイクは補聴器に搭載されており、ユーザーの主に正面の音を増幅し、他の方向からの音を低減するよう設計されています。
指向性の考え方は、各社で異なりますが、ユーザーの背後から来る音を多かれ少なかれ遮断することで、正面の人の声をより聞き取りやすくして会話の理解を助けます。指向性機能を持った補聴器はより満足度が高まりますが、にぎやかな場所でも主に正面からの音声しか届かず周囲の状況が分かりにくいという問題もあります。
長らく補聴器の代名詞ともされてきたこの「指向性」が、オーティコン補聴器のOpn(オープン)など、指向性に代わる新技術の採用で、騒音のある場所でも、正面だけなく周囲360度からの音声を整理して届けることができるなど技術革新が起きています。
ノイズマネージメント(騒音抑制)
ノイズマネージメントは、騒音抑制機能とも呼ばれます。周囲の環境に不要なノイズが含まれてないかどうか、検知のために音信号を分析して、不要なノイズの検出自にはこれを低減します。この機能により、背景騒音やノイズを煩わしく感じることが減り、聞き取りの快適性が高まります。
突発音抑制
騒音抑制機能と同様に、突発音抑制は聞き取りの快適性を高めます。車のキーのガチャガチャ音、キーボードのタイピング、または食器類のカチャカチャ音など突発的に起こるノイズを検出して、それらを即時に和らげます。
不快なハウリングを抑制
帽子をかぶるとき、電話をとるときなどに補聴器で発生しがちなピーンやキーンといった不快な音がハウリングです。過去の補聴器ではハウリング抑制機能が会話の聞き取りに影響することもありましたが、先進の補聴器では、全体的な聞こえへの影響なしに不快なハウリング音だけを低減または除去することができます。
より高度な補聴器技術が可能にする機能とは?
より高度な技術を取り入れた器種では、機能はよりきめ細かく自動化され、騒音がありたくさんの人がいるなど聞き取りの難しい聞こえの環境でのコミュニケーションに役立つ機能を搭載しています。例えば、音声処理のために2つまたは4つのチャンネルを使用する代わりに、高度な技術を備えた補聴器は8つ以上のチャンネル機能を備えています。より細かく信号が分割されることで、信号処理の解像度が向上し、より高音質な聞こえを実現します。
基本技術に加えて、補聴器メーカー各社では、それぞれ独自の高度なデジタル技術を提供しています。一般的な補聴器の機能に加えて、補聴器製品に搭載されている先進技術が可能にしている機能の一部をご紹介いたします。
ウィンドノイズマネジメント
ウィンドノイズマネジメントとは、風切り音がある環境で不快な風の音を抑えて会話をできるだけ届ける機能です。ゴルフをなさる方や自転車に乗るといった屋外の趣味を楽しむ方にとっては、効果的な聞こえが得られます。
ウィンドノイズマネジメントは、補聴器のマイクに吹きつけられる風の影響を検知し、高速かつ正確に突発的な風の音を低減させながら必要な音を届ける高度な補聴器技術の一つです。
データロギング
データロギングとは、ユーザーが補聴器を使用している環境での音響データ、プログラム、音量レベル、およびその他の機能がどれだけ使用されたかを保存する機能です。
蓄積された情報を使用して、アフターケアなどの際にスタッフはこの貴重な情報を使用して、ユーザーのニーズや困っている点などに合わせて補聴器の聞こえをきめ細やかに調整することができます。
学習機能
補聴器によっては、一人一人の聞こえの好みを「学習する」機能があります。特定の音環境に対する音量調整設定を蓄積することで、様々な環境でユーザーが好む音量設定を全体的なボリュームの設定に反映します。したがって時間の経過とともに、補聴器を手動で調節する必要がなくなっていきます。
両耳通信機能
両耳処理とは、左右の耳で装用いただいた場合、それぞれの補聴器が互いにワイヤレスで高速通信する機能です。手動での調節を減らす、左右の補聴器を同期して動作させる(例えば、プログラム1から2に同時に切り替える)ことや、騒音抑制や指向性機能の働きを左右の補聴器でバランスをとることなどに使用されています。
両耳処理と呼ばれるこの分野のより先進の技術では、両耳からの情報を統合して処理する脳の持つ聞く働きを模倣することで、音の方向感や距離感の捉えやすさといったより自然な聞こえの実現に役立ちます。
Bluetooth(ブルートゥース/2.4GHz)互換性
現在補聴器で広く採用されているBluetooth技術は、直接または、補聴器との中継機器を通して、スマホやその他の機器とのストリーミングを可能にしています。
Bluetooth技術は騒音や反響がある場所、少し距離のある環境などでも使用できるため、言葉の理解の助けとなります。また、Bluetooth接続は電波干渉の問題を受けにくいという特徴もあります。
日常生活で補聴器技術はどんなメリットがあるのでしょうか?
賑わっているレストランでの友人たちとの夕食を想像してみてください。食器類のカチャカチャ、他のテーブルで話したり笑ったりする人々、忙しく動き回るウェイターなど、あらゆる方向からの音が届きます。あなたは新しい補聴器を装用し、テーブルの向こう側にの友人の話を聞いています。彼女は冗談を言っています。
補聴器は、ナイフやフォークがお皿に当たりカチャカチャいう音(突発音抑制)、エアコンや換気扇などのヒューという音を低減(騒音抑制機能)、背後のテーブルにいる人の声を抑制(指向性機能、また先進の補聴器では360度の聞こえを作り出せる補聴器もあります)、さらに、この後微調整を行う際のためにレストランの聴取環境に関する情報の保存(データロギング)といったことを自動で同時に行っています。
もちろんあなたの友人からの会話(スピーチ信号)は騒音を抑えながらも増幅して耳に届けます。補聴器は自動的に様々な機能を作動させ、自然な聞こえを作り出しています。ユーザーであるあなたはリラックスして彼女の会話の内容を楽しむことができます。
ここまで補聴器の技術について説明してきました。ご紹介した機能は、先進の補聴器の搭載技術の一例に過ぎません。聞こえは一人ひとり異なります。ご自身の聞こえやニーズに合った補聴器を検討いただく際は、お住まいの地域の補聴器販売店へご相談ください。
また、当サイト検索ページから補聴器専門店をお探しいただいたり補聴器についてご相談いただけます。。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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