スマートフォンが普及し、好きな音楽をいつでも気軽にイヤホンで聴くスタイルが浸透しました。ところがその一方で、大きな音を聞き続けることで引き起こされる「騒音性難聴」のリスクが高まっています。きこえを守るためにはどのように「音」と付き合えばいいのでしょうか?
騒音を聞き続けることで音を感じ取る細胞が損傷
2015年、WHO(世界保健機関)はスマートフォンなどでの音楽鑑賞やイベントでの大音響によって、世界で約11億人の若者が難聴のリスクにさらされていると警鐘を鳴らしました。※1たかが音楽を聴くくらいで難聴になるなんて大げさでは? と感じる人もいるかもしれません。けれど、「騒音」は難聴の大きな原因のひとつです。
なぜ騒音が聞こえを悪くするのでしょう? 私たちが脳に音を伝えるときには、耳の奥にある「蝸牛(かぎゅう)」と呼ばれる器官が働きます。蝸牛には、細胞に毛の生えた「有毛細胞」がピアノの鍵盤のように並んでいて、繊細な毛がそれぞれ特定の音に反応しています。有毛細胞は音の振動によって揺れますが、大きな音は振動が大きいため、有毛細胞の損傷へとつながるリスクが高いとされます。しかも一度ダメージを負った有毛細胞が修復されることはありません。
そのため騒音を聞き続けると、その部分の高さの音の聞こえなくなるということも否めません。
会話が聞こえないくらいの音量を継続的に聞くと、有毛細胞にダメージが
さまざまな研究により、85db(デシベル)以上の音を継続的に聞いていると有毛細胞がダメージを受けやすくなることがわかっています。特に85dbの音を8時間以上、100dbの音を15分以上連続して聴くのは危険とされています(※2)。
音の大きさの目安は、日常会話が60db程度で、大音響やバイクの走行音で会話が聞こえないような大きさがおおよそ80dbです。「シャカシャカ」とイヤホンから音漏れするくらいの音量は直接この音を聞いた場合90db以上であると考えられます。
騒音性難聴は自分で防げるもの。イヤホンの音量には気をつけて
難聴にはさまざまな原因がありますが、唯一、騒音性難聴は自分で防ぐことができます。その方法はとてもシンプルで、大きな音を避けること。WHOはスマホなどを使用したオーディオ利用を1日1時間までに留めるように勧告しています。また音楽フェスやコンサートでは、耳栓を利用するのも有効。大音量のラウドスピーカーからは十分に距離を置くようにしましょう。映画館のスピーカーも大きすぎることがあるので、耳栓を持っていくと安心です。
騒音性難聴の初期症状では、4000Hz(ヘルツ)を主とした高音域の音が聞こえなくなり、耳鳴りが始まります。コンサートの後など、耳鳴りや耳の違和感を覚えることがありますが、これが何日も続く場合は聞こえに影響が出ている場合があります。なるべく早めに耳鼻科を訪れましょう。
※1参考:WHO 1.1billion people at risk of hearing loss
※2参考:米国「HealthyHearing」2017年4月20日の記事「How modern technology is damaging our hearing」(Rachel Thompson寄稿)
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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