ひとことで難聴といっても、聞こえの程度は人によって異なります。補聴器なしでも会話ができる方もいれば、大声で話しかけられないと聞こえない方までさまざま。では、難聴のレベルはどのように区分されているのでしょうか?カギは音量のdBと周波数のHzです。それでは聴力レベルとこれらの音量と周波数の関係性について見ていきましょう。
難聴の程度を客観的な数字でレベル分け
聞こえ方は個人によって異なるため、「大きな音」「小さな音」という表現ではなかなか周囲の人には伝わりません。そのため、聴力を示す客観的な数字が存在します。聴力はdB(デシベル)という単位で表現されており、聞こえの良い方がようやく聞こえ始める値が0dBHLと、基準になっています。聞こえに問題のない値は0dBHLから25dBHL未満とされています。そこから難聴の程度が重たくなるにつれて、数字が大きくなっていく仕組みです。
単位:dB | 音の種類 |
---|---|
0~20 | 深夜の郊外 |
30~50 | 静かな事務所 |
60 | 静かな車の中 |
70 | 騒がしい事務所 |
80 | せみの声 |
90 | 叫び声 |
100 | 電車の通るガード下 |
110 | 車の警笛 |
120 | ジェット機の騒音 |
例えば、聴力が10〜20dBであれば、ささやき声程度の小さな音が聞き取りにくい程度ですが、聴力が110dBになると、目の前で車のクラクションが鳴っても聞き取りにくいほど難聴が進行していることになります。聴力とは「どのくらいよく聞こえるのか」ではなく、「どのくらい聞こえにくいのか」を図る指標となっているのです。
この聴力の程度によって、難聴は大きく軽度、中等度、高度、重度の四つに分かれます。現在日本聴覚医学会では、25〜39dBを軽度難聴、40〜69dBを中等度難聴、70〜89dBを高度難聴、90dB以上を重度難聴に区分しています。
平均聴力レベルが70dB以上、つまり高度難聴や重度難聴の方であれば、身体障害者手帳の認定を受け、補聴器を購入するための補助金などが受けられます。身体障害者手帳の基準に達していない軽度難聴、あるいは中等度難聴であっても生活の困りごとが生じているなら、補聴器の使用を検討しましょう。軽度・中等度難聴の人向けに独自の補聴器購入補助制度を用意している自治体もあります。
「周波数」と「音量」の2つの要素
「音が聞こえにくければ難聴」と考えがちですが、実は聞こえには、音量だけでなく周波数も影響しています。例えば年齢を重ねると、高い周波数の音は聞き取りにくくなっていき、聞こえる周波数の範囲が狭まっていきます。モスキート音(蚊の羽音)もその一つ。モスキート音は17,000 Hz(ヘルツ)前後のとても高い音のため、高齢になるほど聞き取りにくくなると考えられます。
そこで平均聴力を算出するためには、まず人の聞くことのできる主な周波数で、ぎりぎり聞き取れる音量(聞こえの閾値)を調べていきます。この検査を純音聴力検査と呼びます。ここで得られた数字を特別な計算式にあてはめていくことで、平均聴力が算出される仕組みです。現在の日本では4分法(500Hzの聞こえ+(1000Hzの聞こえ×2)+2000Hzの聞こえ÷4)が採用されるケースが多くなっています。例えば500Hzで30、1000Hzで70、2000Hzで90の場合は、平均聴力は65dBとなる計算です。
難聴と上手に付き合うための指標
上記のような検査で聴力を測っていきますが、実際にはこれだけで難聴の程度が把握できるわけではありません。難聴の種類や原因によっては、「音」は聞き取れても、「言葉」がうまく聞き取れないことがあるからです。そこで聴力検査では、言葉の聞き取り具合も調べます。この検査を語音明瞭度検査といます。音量を変えながら「ア」「キ」などの言葉を聞き取り、聞こえたとおりに回答用紙に書き取って、どのくらい音を大きくすれば言葉を正確に聞き取れるのか、その正答率を調べます。語音明瞭度が50%以下の場合も、身体障害者手帳の対象となります。
自らの聴力を測り、難聴の程度を正しく知っておくことは、この先も聞こえと上手に付き合っていく基本です。前述のように、聴力によって使える福祉制度は変わってきますし、自分がどんな音が苦手で、どんな言葉が聞こえにくいのかがわかっていると、対策を立てやすくなります。近頃聞こえにくくなってきたと感じたら、ぜひ一度聴力検査を受けることをお勧めします。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■