聞こえにくさを感じていても、定期健診の聴力検査でとくに問題がなかったら「聞こえが悪いのは自分の勘違いだ」などとして放置してしまいがち。けれど、実際には簡易的な検査ではわからない難聴もあります。耳鼻咽喉科の検査とはなにが違うのでしょうか?キーワードは選別聴力検査、標準純音聴力検査…詳しく見ていきましょう。
定期健診の聴力検査とはどんなもの?
職場などの定期健診で行われる聴力検査は「選別聴力検査」と呼ばれる簡易的なものです。ヘッドホンから聞こえてくる①1000Hz(ヘルツ)の周波数で30dB(デシベル)の音圧の音、②4000Hzの周波数で40dBの音圧の音が聞こえるかどうかを調べます。これはそれぞれ①は日常会話の中心的な周波数、②は早期の難聴を判別する代表的な音です。
検査音が聴取可能であれば「(所見)なし」、聴取不可能であれば「あり」と判断されます。2018年4月1日健診分より判定ルールが変更され、(一部指定事業所・健康保険組合を除く)左右1000Hz、4000Hzのいずれかに「あり」の場合には要精密検査となります(判定G2)(※1)。
定期健診でわからない難聴とは?
定期健診の聴力検査は、静かな環境下で音が聞こえるかどうかを確認しています。私たちの日常では実際にはたくさんの音や声が溢れています。また、レストランやパーティー会場など、騒がしい場所で以前より会話の聞き取りに苦労して疲れやすくなった、そのような聞こえの変化は見出されない場合があります。 また感音難聴の症状の一つでは、音は聞こえても会話の内容がどうもはっきりしないといった特徴があります。例えば「加藤さん」という名前を耳にしたとき「かとうさん」なのか「さとうさん」なのかとっさに判別しにくいケースがあります。加齢や大きな音にさらされるなどの理由から比較的高い音から聞こえにくくなるといったことがあります。しかしながら現在の聞こえの力を把握したり聴力の問題が実際にあるのかについては、「ピー」という信号音の検査よりもう少し詳しい検査が必要です。
耳鼻咽喉科では複数の検査で難聴を見つける
耳鼻咽喉科でも定期健診の聴力テストでもおなじみのヘッドホンを使いさまざまな高さの音を聞く検査を行います。これは「標準純音聴力検査」と呼ばれるものです。それぞれの音の高さでどのくらい小さい音まで音が聞こえているのか測定した閾値(いきち)の結果から、耳の中の細胞(有毛細胞)に対して正しく音が伝えられているかどうか、難聴のためにその機能が阻害されていないかどうかを見ていきます。
さらに言葉の聞き分けを調べる場合は「語音聴力検査」が行われます。これはヘッドホンから流れる「ア」「キ」「シ」などの語音を正しく聞き取れるか調べる検査です。感音難聴は音が大きくても言葉の明瞭度はほぼ変化せず、音が大きいといっそう聞こえなくなるパターンもあります。
聞こえの問題で耳鼻咽喉科に行くべき目安を以下にお伝えします。聴力の低下は自分ではなかなか気づきにくいもの。定期健診では問題ないけれど、聞こえに少しでも心配がある場合、どうぞ耳鼻科にて専門的な検査を受けて医師にアドバイスをもらいましょう。
- 周囲が小さな声で話していると不満を持つ
- テレビやラジオの音量を、かなりの大音量で聞いている
- 会話をしばしば聞き返す。または聞き逃すことがある
- 車やレストランなど、ざわざわしてくると会話の内容がわからないことがある
- 後ろからの呼びかけに気付かないことがある
- 病院や銀行で呼ばれても聞こえていないことがある
※1参考:一般財団法人予防医学協会「選別聴力検査」
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
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記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■