「耳が遠くなる」聴力低下は高齢になってからはじめて始まると思いがちですが、実は40代から始まっています。程度が軽い内は気づかない事も多いですが、年齢を重ねるとほとんどの人の聴力は落ちていっているのです。年齢で聴力はどのように変わっていくのか、予防策はあるのか解説します。
両耳で同じように、高音域から聞こえなくなっていく
年を重ねることで起こる聴力低下は、誰の身にも起こる自然な変化です。下のグラフのように、聴力は一般的に40代くらいから低下し始めます。高音域から次第に聞こえなくなっていくのが特徴で、両耳ともほぼ同じように聴力が低下します。
個人差はありますが60歳くらいになると周りの人から「聞き返すことが多くなった」、「テレビの音が大きすぎる」などと指摘されることが増え、70代になると会話の聞き取りが困難になることもあります。
米国国立公衆衛生院の調査によると、60歳以上の方の5人に1人が聞こえの悩みを持っており、その数は米国内では350万人にも達すると言われています。
年代別に見た難聴の程度と聞き取り度合い ※個人差があります
「見えにくい」より自覚しにくい「聞こえにくい」
加齢による影響は、「聴力」だけではありません。「視力」もその1つですが、たとえば近視なら小さい文字が一様に見えにくくなるので、本人が比較的早くから自覚することができます。
ところが聴力の場合、一人ひとりの症状が異なり、音によっては小さくても聞き取ることができたり、逆に音が大きくても聞き取りにくくなったりすることがあります。
たとえば「た」「ち」などの音の子音部分や、「ぱ」「ば」「だ」「が」などの半濁音・濁音の子音部分は比較的高音域の音ため、音が大きくて低音域の音である「あ」、[お]「う」のような母音によってかき消されやすく、場合によっては聞こえにくくなるのです。
また、静かな場所では問題ないのに、周囲に騒音がある中だと会話の聞き取りが難しくなることもあります。聞こえは状況や体調によっても変化する場合があるため、本人が自覚しないまま進行し、家族や周囲の人々に指摘されてはじめて気づくケースがよくあります。個人によって千差万別な「聞こえにくい」は「見えにくい」よりもずっとわかりにくいのです。
ただし、聴力の低下は視力と同様、個人差も大きいことがわかっています。年齢を重ねても比較的良い聴力が保たれている人もいれば、若いころから聴力低下が早く進行する人もいます。
聴力低下を予防するには血行を良くする生活を心がけて
加齢による聴力低下は、聴覚を長い間使い続けてきたことによる内耳機能の低下をはじめ、その他の複合的な要因が重なって進行します。難聴の原因として最も多いのが、この「加齢による聴力低下」で、現在のところ治療法が確立されていません。
だからこそ、普段から自分の聞こえをチェックし、耳に負担をかけないように気をつけることが大切になってきます。
聴力低下の予防には、耳の血管を健康に保ち、血流を良くしておくことが効果的だと言われています。血糖値や血圧、コレステロールなどに配慮をしつつ、野菜とタンパク質の多いバランスの取れた食事をとるようにしましょう。
適度な運動も加えることができればなおよいです。騒音による聴覚障害を引き起こさないために、大きな音を避けるようにすることも必要です。
しかし、いくら気をつけていても、知らない間に聞こえが低下している場合もあります。もし、下記の項目に1つ以上当てはまることがあれば、聴力低下の可能性があります。
- 他の人の声がささやき声で話しているように聞こえる。
- レストランや人がたくさん集まる場所では聞きづらさを感じる。
- テレビやラジオ、電話などの音量を大きくしがちである。
- 家族や友人たちなどから、「同じことを何回も繰り返して言わなければわからない」と苦情を言われたことがある。
- 会話の内容を理解するために、相手の顔や口元を見る必要がある。
- 日常にある様々な音、鳥の声や足音、時計が時を刻む音が聞こえなくなった。
もし少しでも聞こえづらさがあったり、いつもと聞こえ方が違うと感じたら、早めにお近くの耳鼻科の専門医を受診しましょう。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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