アメリカ疾病予防管理センターによると、全米では500万人以上の子どもたちが、騒音に起因する難聴を持つといわれています。これは日本でも同じ傾向ですから、子どもたちの現在の聴力を守る方法を知ることは重要です。騒音による難聴は予防が可能な難聴です。今回ご紹介する音量計測アプリ、耳の保護具を活用して子どもたちの聞こえを守りたいものです。
通学時に音楽などを聴く場合は音量の確認を
バスや電車での通学中に、お子さんが電子機器などで音楽を聴く、またはゲームなどをすることはあるでしょうか?日常的な習慣になっているという場合は、ヘッドフォンやイヤホンをどの程度の音量に設定すべきかお子さんとお話しいただくことが大切です。
バスや電車の中はエンジンなどの機械音、社内アナウンスや周りの喧騒などが重なって騒音が大きいため、気づかないうちに機器の音量を増してしまいがちです。お子さんの大切な聞こえを守るために、イヤホンの代わりにノイズキャンセリング(騒音を抑制する機能)付きのヘッドフォンを採用することも検討されてください。
音量計測アプリで校庭の騒音をチェック
一般的な街の往来の騒音は85デシベル(dB)程度、電車の警笛が90dB、掘削機の騒音は95dB程度とされます。これらはすべて、お子さんが外で遊ぶ際にふれる可能性のある音量です。 一般的に、85dBが日常生活における許容基準で、それ以上になると難聴などの原因になることがあるとされています。
休み時間にお子さんの校庭を訪ねて、音環境を測ってみましょう。ご自身のスマートフォンに音量計測ができるアプリをダウンロードしておくと、客観的に騒音レベルをはかることができて便利です。
もし騒音レベルが高すぎるようであれば、先生または、学校管理者に相談してみてください。また、お子さんには、警笛やサイレン、交通量の多い通りなど耳に痛みを感じるような騒音から離れるように伝えておきましょう。
必要であればノイズキャンセリングの付いたヘッドフォンなどを装着するといいでしょう。ただし、一方で高性能なノイズキャンセリング機能付きのヘッドフォンを装着する場合などは、車の往来などの音が聞こえない、または聞こえにくい場合もあります。くれぐれもご注意ください。
演奏やスポーツをするときも、耳の保護具があると安心
楽器を演奏したり歌を歌うことは楽しく、会話や言語の能力を伸ばすことにも役に立ちます。周りとの協調性や達成感といった力を伸ばすことにも寄与します。しかしながら、気になることとして大音量の音楽に日常的にさらされることは、内耳のデリケートな耳の細胞を恒久的に傷つけることにもつながりかねません
お子さんが部活などで吹奏楽部に参加している、またはバンドを組んで演奏しているなどの場合は、先生と聴覚保護について話をしてみましょう。 お子さんは練習中または演奏中に、イヤープロテクター(聴力保護具)を付けていますか?付けていない場合は、聴力保護装置に詳しい専門家や耳鼻咽喉科、また補聴器販売店などに相談し、お子さんのためのオーダーメイドの保護具を付けさせることも考慮してみてください。
また、休み時間や体育、部活などでのスポーツプログラムは、健康増進、チームワーク作りや協力、社会関係発達のきっかけになります。しかしこれも、練習中や競技中の子どもたちの耳を守ることが欠かせません。 野球やソフトボールでは、耳とこめかみ部分を防御する必要があります、同様にレスリングでは適切な耳あてを装着する必要があります。
家では親が聞こえの健康についてのお手本に
保護者の方がお子さんのためにできるもっとも大切なことは、家庭で耳の健康に関して自らが手本となることです。 大音量の音楽や野球、サッカーなど観衆の多いスポーツイベント、のような騒音レベルの高い趣味やに参加したり観戦したりときは、耳に保護具を装着する習慣をつけましょう。テレビやカーステレオも適切な音量に保つことが大切です。ウレタン素材などの耳栓は、最も手軽な保護具でありドラッグストアなどで購入いただけます。
また十分な睡眠と、バランスの取れた食事は、発達途中の子供たちの耳だけでなく健康そのものを守る基本です。そして定期的に聴力テストを受け、結果を家族で共有しましょう。お子さんの学校での聴力テスト結果についても、お子さんと話し合うようにしたいものです。 また万一、耳や聞こえに違和感や異変を感じたら、我慢せずにすぐに耳鼻科に相談しましょう。特に小さいお子さんの場合は、自分自身では耳の不調についてなかなか訴えにくいもの、ふらふらしている、熱があるなどの際はどうぞ耳についても観察してみてください。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■