小さい子どもにとっては身の回りの世界、見るもの全てが新しい発見であり、毎日が冒険のようなものですね。長じて色々なことを知っていくにつれて新鮮な発見というものは減っていき、もう全部知っている気になってくると、大人としてかなり円熟してしまったことになります。老成というのはそれ自体が悪いことではありませんが、その先に待っているのが認知症としたらどうでしょうか?今回は認知症についてのコラムです。
年齢と共に物忘れが激しくなった。という人は多いかと思いますが、これは多くの人が実感するものです。
歳をとったのでしょうがないと諦めてしまいがちですが、何も対策をしないでいるとその症状が進行してしまうかもしれません。
最近は認知症の研究も進んでおり、魚を多く食べる日本人は認知症になりにくいという研究報告もあり、魚の摂取量の多い人は認知症リスクが61%も低下するという結果が出ています。
魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)という脂肪酸が脳の働きを活性化すると言われています。
それら脂肪酸は「n-3系多価不飽和脂肪酸」と呼ばれるものですが、魚を毎日1切れ食べているだけでも認知症のリスクは低下するそうです。
それ以外に「何か新しいことに興味を抱く」というのも認知症を回避することに有効だと言われています。高齢になると次第に新しいモノを覚えることへの興味が薄れてしまうものですが、新しいことを覚えようとする意欲が脳を活性化させ、認知症を回避する事に繋がっていきます。
「若い頃に比べて一日が早く過ぎてゆく」と感じる方も多いと思いますが、これも脳科学の見地から解明されています。
この問題を解明したのは19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネ氏で「子供の頃は目にしたモノがみんな珍しく、アレはなんだ、アレはどうしてあのような形をしているのだ、と心に引っかかることから、日常が多くの疑問に溢れており退屈することがないのです。それが大人になるに従って、知ったかぶりで何もかも理解していると思い込み新しい発見が無くなっていくので1日が短く感じてしまうということなのです。
これはまさに認知症に陥る第1歩。当たり前と思って興味を持たなくなることが敵なのです。
この「1日が短く感じる」という現象は「ジャネーの法則」と呼ばれています。
認知症の最大の予防法は家族との会話だと言われています、
自分の母親も昨年11月までは自宅介護で壁を伝いながら自力でトイレへ行くことが出来ていたのですが、その際に転んでしまい腰を打ち、歩く事が困難になってしまいました。
そのことから入院をしたのですが、タイミング悪くコロナ禍での面会制限があり、週に1度の面会しか出来なくなってしまい、面会に行くたびにハッキリ解るほどに会話が思うように出来ない状態へ体調変化していきました。
会話が認知症予防になると聞かされていたことから、自宅介護中は、食事の際に積極的に会話をしていたのですが、わずか1ヶ月の入院で認知症は激しく進んでしまいました。
そして退院して帰宅した時には認知症が激しく進み、表情もほとんどなくなり、さらに「食事にまったく興味が無くなってしまった」という状態になってしまいました。
実は入院前から認知症の傾向はありました。それまで興味深く見ていたテレビ番組にあまり興味を示さないように変化していったのは認知症が少しずつ進んでいたのかも知れませんが。
退院後の母は認知症の症状として、生きるのに最も重要な「食欲」すら忘れてしまっており、そこから点滴で栄養分を受けるという寝たきり生活になってしまいました。
ちょっとした食生活や気持ちの持ちようで認知症は回避出来るのかもしれません。
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記事投稿者
杉村 喜光(知泉)
雑学ライターとして、三省堂『異名・ニックネーム辞典』、ポプラ社『モノのなまえ事典』など著作多数。それ以外に様々な分野で活動。静岡のラジオで10年雑学を語りテレビ出演もあるが、ドラマ『ショムニ』主題歌の作詞なども手がける。現在は『源氏物語』の完訳漫画を手がけている。
2022年6月15日に最新巻『まだまだあった!! アレにもコレにも! モノのなまえ事典/ポプラ社』が発刊。