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ヒアリングフレイルとは?症状や予防対策を紹介

  • 公開日:2023.08.09
難聴

加齢に伴う虚弱を表すフレイルや口腔機能の衰えを表すオーラルフレイルに加えて、最近注目されているのが、聞こえの低下を表す「ヒアリングフレイル」という概念です。ヒアリングフレイルについて正しく理解し、適切な対策方法を知ることは健康寿命を延ばす上で重要な取り組みです。ヒアリングフレイルの症状や予防対策について正しい知識を身につけましょう。

ヒアリングフレイルとは

フレイルとは、2014年に提唱された概念で、加齢に伴って、心身の活力や社会とのつながりが低下した状態です。そのまま放っておくと自立度が低下し、やがては介護が必要な状態にもなりかねません。一方で、適切な対策によって健康な状態へと回復可能な時期でもあり、介護が必要な状態と健康な状態の間の状態とされています。健康長寿に向けて、フレイルの早期発見と適切な対策が重要視されています。

ヒアリングフレイルとは、2018年に新しく示された概念で、加齢に伴う聴覚機能の低下により、コミュニケーションの困難さや日常生活の質(QOL)の低下がみられる身体の衰え(フレイル)のひとつとされています。

加齢に伴う聞こえの低下による社会参加の減少や会話がかみ合わないなどの症状は、周囲から見ると、心身の活力低下(フレイル)や認知機能の低下の問題と間違えられやすく、適切な対応がなされないまま心身機能の低下につながり、要介護状態へと進行することもあります。

加齢による聴覚機能の低下が正しく評価されて、適切な対策が行えるように「ヒアリングフレイル」は自治体などによって啓発が進められています。

※「ヒアリングフレイル」はユニバーサル・サウンドデザイン株式会社の登録商標です。

ヒアリングフレイルの症状と影響

聞こえが低下するヒアリングフレイルを放っておくと、ヒトと話すことを避けるようになり、閉じこもりがちになることがあります。

コミュニケーションの機会が減り、活動性が少なくなって社会的に孤立すると、認知機能の低下やうつ、心身機能の低下などにつながる恐れがあります。

難聴と認知機能の低下、うつ、心身機能の低下の関係は研究によっても報告されています。

ヒアリングフレイルでは、「テレビやラジオの音が聞こえにくい」「相手の話を聞き間違えたり、正しく聞き取れなかったりするために内容が理解しにくい」などの状況から、次のような症状がみられます。

  • テレビやラジオの音量、話す声が大きくなった
  • テレビやラジオを見たり聞いたりしなくなった
  • 外出の機会が減って、家に引きこもることが増えた
  • 会話をしていても反応が乏しい
  • 会話が噛み合わないことが増えた
  • 前よりも怒りやすくなった

ヒアリングフレイルの予防対策

point

中等度以上の難聴がみられる高齢者のうち約70%が病院受診を希望しておらず、とくに難聴の自覚症状がない高齢者にその傾向が高いという報告があります。

普通の会話が聞き取りにくくなる中等度以上の聞こえの低下があっても、自分では気づいていない高齢者が多くいることがわかります。

ヒアリングフレイルの予防対策として、次のことが挙げられます。

1.ヒアリングフレイルを知って、聞こえの低下の早期発見につなげる

加齢とともに聞き取る能力が衰えるヒアリングフレイルについて知り、一人一人が聞こえの低下のリスクを意識することが大切です。同時に、家族や周囲のヒトも、聞こえの低下が起こっていないかという視点を持って、聞きづらさの早期発見につなげることが重要です。

普段から家族や周囲と会話によるコミュニケーションを積極的にとることを心がけましょう。遠方であっても電話で会話する習慣を持っておくと、「いつもの声量で話しているのに、聞こえにくい」というように、ヒアリングフレイルに気づきやすくなります。

また、いつも視聴するテレビやラジオの音量を決めておくと、「最近、以前よりも音量が大きくなってきた」など、客観的視点で聞こえの低下を判断しやすくなります。

2.耳の不調を相談できる耳鼻咽喉科医(補聴器相談医)のかかりつけを持つ

定期的に聴力検査を受けられる補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科のかかりつけを持っておきましょう。本人や家族が聞こえにくさを感じたときにも、聴覚機能を適切に診査・診断した上で、補聴器の必要性の判断や適正な使用のアドバイスを受けられます。

「日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会ホームページ」にて補聴器相談医名簿が公開されています。

3.各自治体のヒアリングフレイルチェックや聞こえのチェックツールを活用する

お口の健康を守るオーラルフレイル対策として、8020運動(80歳で自分の歯を20本以上維持しよう)は広く知られるようになってきており、歯に対する予防意識を持つ方も増えてきています。

同様に、耳の健康を守る取り組みとして、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会により「きこえ8030キャンペーン」が展開されています。これは「80歳でささやき声が聞こえるレベルの30dBの聞こえを維持しよう」という内容です。このように、耳の健康維持のための取り組みが少しずつ広がってきています。

・各自治体におけるヒアリングフレイルチェック

聞こえの低下の予防として、ヒアリングフレイルチェックを実施する自治体も増えてきています。お住まいの自治体のホームページや市政ニュースなどをチェックしてみましょう。大阪府豊中市・吹田市・堺市、東京都豊島区・西東京市、埼玉県富士見市・入間市、山形市などで取り組まれています。(2023年6月13日現在)

・聞こえの状態をチェックできるオンラインツール

聞こえのチェックを行えるオンラインツールを紹介します。

・オーティコン「オンライン聞こえのチェック」

1904年の設立以来、100年以上の歴史を持つデンマークの補聴器メーカー・オーティコンのオンラインで行える聞こえのチェックです。聴覚ケアの専門家らの意見をもとに開発されたツールで、スマートフォンやパソコンのブラウザから、ダウンロードなしで匿名にて行うことができます。3種類の周波数の音を聞いて回答する形式で、回答後に聞こえの状態の結果が表示されます。3分で完結するので、気軽に取り組むことができます。

こちらのオンラインツールで得られる結果は、聴力検査の代わりとなるものではありません。聞こえの状態に不安や気になることがある場合は、耳鼻咽喉科を受診の上、適切な聴力検査を受けましょう。

オンライン聞こえのチェックを試す

聞こえの低下に早めに気づき、適切な対策を

加齢に伴う聞こえの低下を気づかないまま放っておくと、認知機能の低下や心身機能の低下、うつなどにつながるリスクがあります。聞こえの変化に早めに気づけるように予防対策を行い、いざというときに相談できるかかりつけ医を持っておくことが大切です。

  • 記事投稿者

    丹野愛

    丹野 愛

    フリーライター。医療・介護系のサイトコンテンツやコラムなどを執筆。作業療法士。福祉住環境コーディネーター2級。認知症ライフパートナー2級。

  • 記事監修者

    高島 雅之先生

    『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■

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