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騒音障害を防止するためにできることは?おすすめの対処法を解説

  • 公開日:2024.08.07
難聴
都市開発

騒音を発生する場所にいると、気づかないうちに騒音性難聴になるリスクがあります。自分では騒音と思っていなくても、実際は耳に大きな負担がかかり、耳の機能が低下する場合もあるでしょう。騒音障害防止への対策が広く浸透していると言い難いため 「騒音障害防止のためのガイドライン」が約30年ぶりに改訂されました。本記事では主なポイントと対策を解説します。職場ごとで適切な騒音防止策を実践し、難聴を未然に防ぐための参考にしてください。

騒音障害防止のためのガイドラインについて

本ガイドラインは、騒音作業に従事する労働者の騒音障害を防止することを目的として制定されました。過去、日本では職場にて騒音対策として作業場における作業環境測定の実施・騒音を起こす場所の明示・騒音の伝播防止・保護具の備え付けなどがおこなわれています。

また、1992年10月には騒音障害防止対策を体系化した「騒音障害防止のためのガイドライン(旧ガイドライン)」が制定され、対策がおこなわれてきました。

しかし、以下2点の理由により、約30年ぶりとなる2023年4月にガイドラインが改訂されています。

  • 騒音障害防止対策の対象となる作業場ではなかなか浸透されなかった
  • 旧ガイドライン制定後から現在に至るまで発展してきた技術や知見を反映するため

なお、おもな改訂ポイントは以下のとおりです。

 

改訂項目 おもな改訂内容
騒音作業 騒音障害防止対策として、別表第1・第2で挙げられている作業場※(とくに騒音対策が必要とされる場所)以外であっても、騒音レベルが高いと思われる業務をおこなう場合は、ガイドラインに基づく騒音障害防止対策を実施する。
機械設備等製造業者に関わる留意事項 機械設備等製造業者は騒音源となる機械設備に関して設計・製造段階から低騒音化に努め、騒音レベルに関する情報を公表する。
労働衛生管理体制 事業者は衛生管理者・安全衛生推進者などから騒音障害防止対策の管理者を選定し、ガイドラインの事項に取り組ませる。
作業環境管理 別表第1・第2の作業場※(とくに騒音対策が必要とされる場所)を区分し、それぞれにおける作業環境管理の方法を実践する。「個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定」「個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定」に基づき、測定・評価・措置および記録をおこなう。
作業管理 聴覚保護具の使用・作業時間の管理をする。
健康管理 雇入時等健康診断時のオージオメータによる聴力検査に6,000ヘルツにおける検査が追加。また、騒音レベルが継続的に85㏈未満である場所で業務に従事する労働者については定期健康診断が省略できる。
労働衛生教育 労働衛生教育として、管理者が作業者に対し、騒音が人体に及ぼす影響・適正な作業環境の確保と維持管理・聴覚保護具の使用・作業方法の改善・関係法令などについてレクチャーする。
騒音防止のためのガイドライン (厚生労働省)

 

騒音障害を引き起こすリスクのある場所

騒音にさらされ続けると、耳の機能が損なわれ、難聴になるおそれがあります。騒音障害防止のためのガイドラインでは、「別表1 労働安全衛生規則第588条に規定する8屋内作業場」「別表2 別表1以外の作業場で、騒音レベルが高い52作業場」が騒音防止対策をおこなう対象です。

とくに以下の現場では騒音障害を引き起こすリスクがあります。

  • 建設工事現場
  • 砕石・石材加工の現場
  • 林業・木工作業現場
  • 空港の駐機場所
  • 屋内作業場

作業中に生じる音によって騒音障害になる可能性があるため、難聴対策をしなければなりません。

建設工事現場

建設工事現場では、道路舗装をおこなうためにコンクリートカッターやコンクリートブレーカーを使用してアスファルトを切断し、騒音を引き起こされる場合があります。

また、電動ドライバーを使用し、ボルトやナットを締め付ける際に大きな音が発生する場合もあるため、騒音対策を徹底しなければなりません。

砕石・石材加工現場

石材を裁断する現場では、裁断機による機械音によって騒音が引き起こされる場合があります。

また、岩石に穴を開けたり石を割ったりするための削岩機を使用する場合も大きな音を引き起こすケースがあるため、騒音防止対策が必要です。

林業・木工作業現場

木材を切断するための丸のこ盤や帯のこ盤などを用いて作業する場合、騒音が発生する場合があります。

また、木材の皮を削ぐための水圧バーカーやヘッドバーカーを使用する場合も騒音障害を引き起こす原因になります。

空港の駐機場所

空港の駐機場所では、航空機の給油や荷物の積み込み、指示誘導などの作業が必要です。作業中は飛行機から発生する大きな音により、騒音障害が起こる場合があるため、対策が求められます。

屋内作業場

屋内においても、金属やその他の加工、金属の塑性加工、また鍛造、成型などハンマーによる金属打撃、金属の研磨又は砂落とし、チェーン等用いてのドラム缶の洗浄、ドラムバーカーによる木材の削皮、チッパーによる木材の切り分け、多筒抄紙機による紙すきが、騒音障害につながる可能性がある作業場としてガイドラインに挙げられています。

屋内で作業する方も、屋外で作業するときと同様に騒音に十分配慮してください。

騒音障害を防ぐ対策

POINT

騒音障害を防ぐためには、以下3つの視点から対策をおこなう必要があります。

  • 音源における対策
  • 伝播経路における対策
  • 作業者側の対策

音の発生源から発せされた騒音を抑える工夫をおこなうことが必要です。また、作業する際は音の発生源から距離をとったり、耳栓やイヤーマフなどを装着して対策してください。

音源における対策

工事をしたり、石材・木材を加工したりする現場では、機械や工具の音が原因で騒音障害になるケースがあります。

そのため、なるべく低騒音の機械や工具を使用することが大切です。また、機械の振動が騒音の原因になっている場合は、機械や作業台の下に防振ゴムを敷くことが推奨されています。

部品同士がこすれて騒音を発している場合は、部品交換や給油が推奨されています。さらに、騒音の発生源を防音パネルや防音カバーで覆うことも効果的です。

伝播経路における対策

騒音の発生源となるものが音の響きやすい場所になる場合は、作業者から遠い場所に設置することが推奨されています。

また、騒音の発生源と作業者の間にシャッターやついたてなどの遮蔽物を設けることも大切です。

作業者側の対策

作業をする際は、防音監視室を設け、その中で業務を進めてください。また、騒音を発する機会を遠隔操作し、音の発生源から距離をとりながら作業することも大切です。

作業する際は、以下の防音保護具を使用することをおすすめします。また、着用感や長時間着用しても耳に負担がないかを確認のうえ、騒音防止対策として活用することが重要です。

イヤーマフ(耳覆い)

イヤーマフには、音を遮るための柔らかいクッションがついています。種類によっては、ノイズキャンセリング機能や騒音の程度に応じて遮音性能が変化するものがあります。

脱着が容易にでき、耳栓と併用することで遮音性能が高められるのが特長です。一方で、ヘッドバンドが付属しているため、一般的なヘルメットとの併用はできません。

耳栓(発泡タイプ)

ウレタンフォームと呼ばれる素材を採用した発泡タイプの耳栓は、細い棒状に丸めた状態で耳に挿入することで、時間が経つとともに耳にフィットするように膨らんでいきます。

比較的安価であり、正しく使用できれば大きな遮音性能が期待できるのが特長です。一方で汚れを保持しやすく、使い捨ての使用が推奨されているため、ランニングコストがかかります。

耳に挿入する際は、しわができないよう可能な限り細く丸めるように工夫してください。

耳栓(形成タイプ)

形成タイプとは、形が決まっているタイプの耳栓です。軟質プラスチックやゴムなどの弾力性のある素材で作られているため、あらゆる耳にフィットするように設計されています。

変形しない限りは洗いながら再利用でき、長期間使用できる点が特長です。一方で、遮音性能は中程度とされています。

騒音障害を防止する取り組みを浸透させるための対策

騒音障害を防止する対策があっても、取り組む姿勢がなければ意味がありません。騒音が大きい職場環境の方には、騒音への理解をしてもらうための教育をおこなう必要があります。

皆さんの職場は実施されていますか?常時騒音作業の従事者には、以下4つの労働衛生教育を実施しましょう。

内容 教育範囲 時間
騒音が人体に与える影響 影響の種類や起こりうる聴力障害 60分
適正な作業環境の確保と維持管理 騒音測定と作業環境の評価の仕方・騒音発生源対策・騒音伝播経路対策 50分
防音保護具の使用方法 防音保護具の使用方法・管理方法 30分
改善事例・関係する法令 改善事例・騒音作業に関係する労働衛生関係法令 40分

教育を実施する講師は、騒音に関する最新の知識や教育スキルをもった担当者であることが望ましいです。

まとめ

スーツかつ作業服

騒音障害防止対策のために、2023年4月より騒音障害防止のためのガイドラインの改訂がなされました。

騒音障害を発生させる場所としては、建設工事現場や石材加工・木工作業現場などが挙げられます。

騒音による健康被害を出さないためにも、許容時間を超えて騒音に晒さないよう作業時間の管理や耳栓やイヤーマフなどの聴覚保護具の使用を徹底することが大切です。

また、騒音に関する最新の知識や教育スキルを有した担当者の選定や、定期的な労働衛生教育を実施する体制を事業所ごとに築いていくことも重要となります。

騒音防止策の実践により、騒音作業従事者の聞こえを守りましょう。

  • 記事投稿者

    医療ライターゆし

    医療機器メーカー(東証プライム市場上場)の営業職に約10年間従事。日々、多くの医師やコメディカルと関わり合いながら、ライターとして多くの医療記事を執筆している。

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