何らかの原因で聞こえが悪くなる場合、両耳同時に聞こえにくくなるとは限りません。片方の耳だけが聞こえにくくなったとき、どのような影響があるのでしょう?また、補聴器を必要とするときは聞こえにくくなった側の耳にだけ装用すれば良いのでしょうか?両耳聴の場合と片耳だけで聞いた場合の、聞こえ方の違いについて解説します。
両耳で聞くことで音の聞こえる方向が明確になり、安全性が高まる
騒がしいところでは、さまざまな音がいろいろな場所から聞こえてきます。その状況で特定の人の話を聞きたいと思った時、私たちはその人のいる場所を確認し、その人の声に意識を集中します。つまり、聞きたい音に耳を傾けるには、「どこから音が聞こえてくるのか」という情報がとても重要といえます。
両方の耳で聞くことを両耳聴(りょうじちょう)といい、脳は左耳と右耳のそれぞれに入ってくる音を絶えず比較しています。
たとえば、右方向で鳴った車のクラクションの音は、左耳よりわずかに大きな音でそして早く右耳に到達します。脳は瞬時のうちにこのわずかな差を、判断し、音のする方向を察知します。脳が音の方向を感知するためには、両耳からの音情報が必要なのです。
補聴器も両耳装用することで疲れにくくなる
パーティなどで複数の人が話しているときや道路を渡ったりするとき、または静かな場所でも、脳は左右の耳に入ってきた音の情報を受け取って、絶えず比較し続けています。暮らしにあふれる音をバランスよく両耳で聞き取ることで、自然で快適な日常生活を過ごすことができます。
しかし、片耳だけで音を聞くようになると、左右どちらかの耳に音が集中するため疲れやすくなってしまいます。
補聴器を片耳のみに装用する場合も同様で、補聴器を付けている耳と付けていない耳の聞こえの感度が異なるため、意識的に音のする方向へ顔を向けるなどの努力が必要です。両耳装用なら、片耳では聞き取りにくかった小さな音も無理なく聞き取ることができるため、耳が疲れにくくなります。これが補聴器を使用する際に、専門家が両耳での装用をおすすめする理由の1つです。
聴力に合った補聴器を両耳に装用すれば、脳が持つ「騒音は無意識に無視して言葉を聞く」という能力を活かすことができ、騒音下における聞こえが大きく改善されます。このことは健聴者とほとんどの難聴者の双方にあてはまることが、多くの研究によって示されています
聴力が低下した耳を放置するとよりダメージが深まる
片方の耳の聴力が落ちた状態が長期間続いている場合、脳は聴力の良い方の耳から入ってくる情報を利用することに慣れてしまっていることがあります。すると、悪い方の耳は忘れられ、使われません。長く使われないでいると、音声情報を脳に伝える能力がさらに衰え、補聴器を使ってトレーニングをしても機能が回復しなくなる恐れがあります。
しかし、もし悪い方の耳がまだ機能しているのであれば、その耳への刺激を続けることが重要です。悪い方の耳にも早い時期から補聴器を付けることが、聞こえと脳との回路を早く回復することにつながります。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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