研究によると、金銭的な理由以外にも、補聴器に対するスティグマ(否定的なイメージ)が根強くあるため、多くの人が必要なサポートを補聴器から受けることができないでいます。
私たちの文化が若さとその活力を最も高く位置付けて賛美していることに疑いはないでしょう。難聴を持つ人が補聴器を着けることをためらうばかりでなく、老けてみられることを恐れるのも無理はないことかもしれません。
難聴と補聴器にかかわるスティグマ
Margaret Wallhagen博士の研究発表によると、難聴のスティグマは 「自己認識の変化にともなう感情」 と強く関連していることがわかりました。例として挙げられているのは 「能力がある」 対 「能力がない」 、 「明敏である」 対 「認知的な問題がある」 という感覚です。研究対象者の中には、これらの感覚のせいで、難聴に対するケアを求めるのを先送りしてしまう人もいました。
Wallhagen氏の研究では、スティグマをさらに3つの部分に分けています。先に述べた自己認識の変化と、年齢差別と虚栄心です。高齢者が「老い」を見ることを望まないとき、虚栄心は最もその役割を果たすでしょう。
これは西洋文化全体の問題でもあります。「一般大衆は、難聴のある人に対して、「年をとっている」とか「認知機能が低下している」 、 「コミュニケーションのパートナーが少ない」 、あるいは概して「興味がない」 という認識でしかない。」と、The Hearing Review誌に掲載された論文の著者らは述べています。
調査によると、補聴器をつけない理由を尋ねられると難聴をもつ人は「着けるのが恥ずかしい」 「着けていることをからかわれる」など、否定的なイメージを喚起させる理由を挙げています。
心も体も傷つく
これは非常な損失です。彼らは難聴を隠し、意思疎通がうまくできないような状況を避けるようになります。これは心身の健康に悪影響を及ぼします。適切にケアされない難聴は「聴覚のはく奪」すら引き起こし、認知症や転倒のリスク増加にもつながります。
補聴器装用を怖がらない
若さと活力を保ちたいと思われますか? であるなら、否定的なイメージと戦い、補聴器を装用してください。結局のところ、人々に何回も繰り返しを求め続け、質問への答えが不適当で、周囲の世界から切り離されている人ほど、年を取っている人はいません。補聴器をつけることでより健康になり、社会的にも活動的で、精神的にも鋭敏で、仕事でも活躍し続けることができます。
受容
だからといって、プロセスが簡単になるわけではありません。聴力の低下に気持ちが沈んでしまうかもしれません。しかし、それが自分の聞こえを受け入れられるきっかけになるかもしれません。
「難聴とうまくやっていくためには、難聴を認識し受け入れなければなりません。」と、The Hearing Review誌の著者らは述べています。「難聴の受容に特有なのですが、多くの人は、本来感じる必要のない羞恥心や自尊心の低下を克服しなければなりません。」
サポートを得るには
もしあなたに難聴があって、そのケアについて何から始めたらいいのかわからない場合には、近くの聴覚の専門家を探してください。もし補聴器が必要なときには、専門家がどうすればよいのか丁寧に助言してくれるでしょう。
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します
■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2021年8月17日の記事「Stigma and hearing loss」(Joy Victory寄稿)
https://www.healthyhearing.com/report/52576-Seniors-worried-about-the-stigma-of-hearing-aids
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
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記事監修者
田中 智英巳
デマント・ジャパン株式会社 アドバンスト・オーディオロジー・センター・センター長、ハワイ大学マノア校 Adjunct assistant professor, 静岡県立総合病院 客員研究員、ASHA認定オーディオロジスト、ハワイ州オーディオロジスト。■詳しいプロフィールを見る■