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内耳(ないじ)は音を脳に伝える変換器:聞こえのしくみ③

  • 公開日:2021.11.10
補聴器 健康
耳の模式図

音を聞く行為は、実は脳と深い関連があります。音は耳の中をどのようにして伝わり、どのように脳へ伝わっているのでしょうか。耳は上図のように、「外耳(がいじ)」「中耳(ちゅうじ)」「内耳(ないじ)」の3つの部分に大きく分かれます。特に音を脳に伝えるうえでは、内耳に備わった特殊な細胞が関係しています。連載第3回目は、「内耳」の働きを解説します。

音の振動を電気信号に変換し、脳へ伝達

外耳中耳が音の振動を内側へと伝えるのに対して、内耳は音を感じる働きをすることから、「感音系」と呼ばれます。内耳は、音の振動を電気信号に変換し、内耳神経を介して脳へと送っています。この電気信号を受け取った脳が、情報を解析することで、さまざまな音を言葉や音楽として認識したり、必要な音だけに集中するといった「聞く作業」が可能になるのです。

内耳のなかでも聞こえで重要な働きを担っているのが、「蝸牛(かぎゅう)」。その名前のとおり、カタツムリのようなうずまき型をした器官です。

蝸牛の内側はリンパ液で満たされ、有毛細胞という細い毛の束を持った細胞が並んでいます。音の振動が蝸牛のリンパ液を揺らすと、有毛細胞がその揺れを感じ取って電気信号へと変換。ここで生じた電気信号が内耳神経を経由して脳へと伝わっていきます。

有毛細胞はそれぞれ対応する音の高さが決まっており、蝸牛の入り口付近にある有毛細胞は高い音に、奥の方にある有毛細胞は低い音に反応します。この違いがあるから、私たちは音の高さを聞き分けられるのです。

一度失われた有毛細胞は再生しない

有毛細胞はとても繊細で、大音量などにさらすとダメージを受けます。特に、蝸牛の入り口付近にある高音域の有毛細胞は、奥の方にある低音域の有毛細胞よりも多くの振動にさらされるため、ダメージを受けやすくなっています。

年齢を重ねると少しずつダメージが蓄積していくため、加齢に伴って高音域の有毛細胞は自然と減少していきます。こうなると、子どものころは高い音が聞こえていたのに、大人になるにつれて聞こえなくなってきます。モスキート音(17,000 Hz前後のとても高い音)が若い人にだけ聞こえるのはこのためです。歳を取って聞こえにくくなるのはごく自然なことなのです。

若い人でも大きな音を長時間聞く生活を続けていると、有毛細胞は損なわれます。工事の音や工場の機械音、音楽コンサートなどの大音量に耳をさらし続けたり、あるいはヘッドフォンなどで大音量を聴き続けることは有毛細胞を傷つけ、難聴のリスクを高めます。

残念ながら一度ダメージを受けた有毛細胞を再生する手段はありません。有毛細胞の損傷をはじめ、内耳や脳の障害などによって聞こえにくくなった状態を「感音難聴」といいます。治療は困難ですが、補聴器で聞こえを補い、生活の質を高めることは可能です。また、重度難聴の場合は人工内耳手術などの選択肢もあります。

大切なのは、早い段階から補聴器などを使って音の情報を脳に届け、聞く力をきちんと使い続けることです。聞こえにくいと感じたら、早めに耳鼻咽喉科に相談しましょう。

  • 記事投稿者

    ヘルシーヒアリング編集局

    ヘルシーヒアリング編集局

    1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート

  • 記事監修者

    高島 雅之先生

    『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■

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