軽度の難聴であれば問題ないと、対処を先送りにしていませんか?また軽度の難聴で補聴器をつけても効果の実感が少ないと考えていませんか?しかし、実際は軽度の難聴でも早めの対処がとても大切です。本記事では軽度難聴の及ぼす影響や早めの対処の大切さについて解説いたします。
キーポイント:
- 軽度の難聴であれば、多くの日常生活の会話において「ごまかす」ことができるでしょう。
- しかし、軽度だからといって問題がないわけではありません。特に騒がしい環境では、言葉の聞き取りに影響が生じていることでしょう。
- 補聴器は最も一般的な対処法です。
軽度難聴とは
難聴は聴力検査の結果により聴力レベルに応じて分類されます。軽度難聴はWHOでは20dB(デシベル) HLよりも静かな音を聞くことができないことと定義されています。(「WORLD REPORT ON HEARING」(2021年、WHO)の定義より。以前は25dBとされていましたが、より早い段階から軽度難聴に含むよう基準が変更されました。)
軽度難聴で聞き取りにくい音
言葉の明瞭さが低下し、聞き分けることが難しくなります。また、聞き取りに苦労する傾向があります。
- ささやくような会話
- 水の滴る音
- 木の葉のざわめき
- 床やカーペットを歩く足音
- 車のウィンカーなど、音量が小さい警告音
- 歩道で後ろを歩く人の声
- 女性や子供の声
- 鳥のさえずり
- 騒音下での会話
低い音と高い音ともに聞き取るのに苦労するよう感じられることもありますが、ほとんどの人は最初に高い周波数の音が聞こえなくなります。
軽度難聴の原因
軽度難聴と診断される理由はさまざまです。中には早期に治療を行うことで、聴力が回復する可能性がある場合もあります。治療の可能な難聴と、治療が難しい難聴についてはこちらをご覧ください。
軽度難聴の生活への影響
軽度難聴の方によくあるのが、「聞こえているのに理解できない」という訴えです。聞こえているのに話し相手の言葉を正しく理解することができないことから、会話をすることが難しくなります。
生活の質の問題
- 人に何度も聞き返さなければならない
- 騒がしい場所での聞き取りに苦労する
- この2つの問題のために、社会的に孤立する
難聴の程度が軽い場合でも、聞き返しを繰り返さなければならないことで、億劫になったり、疲れてしまったり、苛立ちを覚えたりすることで、人間関係に悪影響を及ぼすことがあります。
難聴があると静かな環境では会話についていけるとしても、周囲に雑音があると問題が生じる可能性があります。難聴の程度に関係なく、脳は音を補い理解するために一生懸命働かなければならないためです。
これにより、難聴がある多くの方は、人付き合いを億劫に感じる傾向にあります。
たとえ難聴の程度が軽くても、効率的にコミュニケーションができないことは、社会的孤立や社交の楽しさの低下につながります。
軽度難聴に対する聞こえのケアの価値
軽度難聴であっても、医師の診察と指導が重要です。また、聞こえの問題に対して適切なケアを受けないままにすると、生活の質の問題に加えて、将来的に他の健康問題につながる可能性があります。
難聴になると、脳にかかる認知的な負担が増えるため、短期記憶に悪影響が出ることがあります。会話や音声を理解するために多くの労力が必要な場合、本来使用されないはずの脳のリソースが会話を理解するために使用されることになります。その結果、脳の他の領域にも負担がかかるのです。
このような脳への負担が長期にわたって続けば、認知機能が低下する懸念はさらに大きくなります。
実際、わずかな難聴でも、聴力が正常な人と比べて、認知機能の低下や認知症、アルツハイマー病などの発症リスクが高まることが研究でわかっています。
対処は早いほどよい
難聴に気づいた人は、補聴器の装用をはじめるまで平均7年ほどかかると言われていますが、この間も難聴は進行することと、脳は音を適切に聞く方法を「忘れ」はじめることに注意が必要です。
一定の時間が経過すると、増幅された音声が補聴器から耳へ入ったとしても、それを処理する脳への刺激が不足してきたため、以前のように音声を解読する方法を忘れてしまっています。
忘れていた刺激を脳へ送る、いわば補聴器をつけることによるトレーニングを続けることで処理方法を思い出す効果が期待できます。このトレーニングは、早くはじめるに越したことはありません。
よくある質問
聞き取りにくいのは集中力の問題でしょうか?
これは、軽度の難聴者がよくいだく感情です。ただし、ある程度の難聴がある場合、問題は集中力や怠惰ではないことを知っておくことが重要です。あなたの耳と脳は、音を処理するために追加の助けを必要としています。
補聴器をつけてもそんなに変わらないのでは?
まだ重度の難聴ではないから、補聴器が自分の生活に変化をもたらすとは信じられないかもしれません。しかし、健康上の利点に加えて、補聴器を手に入れた後に再び聞くことができる音に喜び満足を得る方は多くいらっしゃいます。
私は補聴器を装用した方がいいですか?
軽度の難聴を持つ人々の大多数は、補聴器を装用する候補です。補聴器技術は長い時代を経て洗練され、スタイリッシュなデザインとなりました。個々人の難聴の程度に合わせて調整して使用します。補聴器は、幅広いライフスタイルや予算に合うだけの種類があり、周囲の人々とのつながりを保つのに役立ちます。
補聴器の入手の方法
聞こえを改善するための最初のステップは、聴力検査のため耳鼻咽喉科の受診をすることです。この結果が今後の聴力レベルのベースラインとなり、今後の聴力の状態の把握に役立ちます。
補聴器販売店で専門的なサポートを受けることもおすすめです。購入前のレンタルも活用を検討してみてください。こちらからお近くの補聴器販売店を検索していただけます。
■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2024年5月28日の記事「Mild hearing loss」(Joy Victory, Emily Ostrowski 寄稿)
https://www.healthyhearing.com/report/53558-Mild-hearing-loss
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート
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記事監修者
若山 貴久子 先生
1914年から100年以上の実績「若山医院 眼科耳鼻咽喉科」院長。■詳しいプロフィールを見る■