耳の聞こえに違和感を持った場合、皆さんはどうしますか?すぐに病院へ行って検査をするという方もいるでしょう。「年齢のせいだろう」「少し様子を見てから」と、受診を先延ばしにする人もいるかもしれませんね。 耳が聞こえにくい状態である「難聴」にはいくつか種類があり、中には聴力の回復が見込めるパターンもあります。「もう年だから仕方ないだろう」と諦めず、まずは原因を確かめることをおすすめします。今回は、「難聴」をきたしても聴力の回復が期待できる疾患について、4種類ご紹介します。
難聴の特徴と種類
難聴には、外耳・中耳に原因がある「伝音難聴」と、内耳や神経・脳に原因がある「感音難聴」があります。一般的に、伝音難聴の場合は、薬や手術などの治療で改善することが多いです。感音難聴は、加齢による難聴も該当しますが、補聴器を使って聞こえを補うことが大切になります。
聴力の低下は、加齢が大きな要因で、誰もが一生のうちに多かれ少なかれ起こる症状です。40歳ごろから、自覚はなくとも高音域の聴力が少しずつ低下していきます。
自覚を伴うようになるのは、60歳代ごろが多いです。75歳以上では、半数が「難聴」に該当します。あまり若いうちから聞こえに異変を感じる場合は、加齢による難聴ではない可能性が高いでしょう。
原因によっては、聴力の回復が見込めることもあります。
回復できる難聴を引き起こす疾患とは?
回復できる難聴の原因には、どのようなものがあるか、代表例を4つご紹介します。
中耳炎、外耳道炎
中耳や外耳の炎症により、耳の聞こえが悪化する「中耳炎・外耳炎」の場合は、薬を使った治療で回復することが多いです。
中耳炎は、風邪などにより鼻や喉から侵入したウイルス・細菌が耳にも影響することで発症します。一方の外耳炎は、耳に水が入ったり、耳掃除で傷つけたりすることが原因です。
症状はどちらも似ており、以下のようなものが挙げられます。
- 聞こえにくい(難聴)
- 耳が痛い
- 熱が出る
「鼻すすり」が原因で、中耳炎が悪化する場合もあります。中耳炎は「子どもの病気」と思われがちですが、耳の機能が低下することで、高齢者にも多い点には注意が必要です。
慢性的な中耳炎の方は、難聴のほか、耳だれ(耳から液体が出てくること)や耳のこもった感じなども出てきます。
慢性中耳炎の一種である「真珠腫性中耳炎」は、重症度が高い病気です。進行性で、難聴だけでなく、めまいや顔面神経麻痺もでることがあります。進行に伴って耳の内部の骨が破壊されてしまうため、早いうちに気がついて対処しなければ難聴をくい止めることができません。比較的若い、30代くらいまでの方で「耳の聞こえが変だ」と感じられたら、早めに医療機関を受診しましょう。
鼓膜穿孔
中耳炎や、耳かきなどによる外傷が原因で起こる「鼓膜穿孔」も、聞こえに影響します。これは鼓膜に開いた穴(穿孔)の大きさによりますが、小さければ自然に閉じることが期待でき、大きい場合は手術で閉鎖することもあります。
中耳炎などで膿が溜まっていた場合、鼓膜穿孔を起こす前は強い痛みがあり、穿孔した後は少し痛みが和らぐのが特徴です。外傷で鼓膜穿孔を起こした場合は、急激に強い痛みが出て、その後難聴、耳鳴り、出血などが起こります。
いずれにせよ、耳の痛みと聞こえづらさある場合、医療機関を受診しましょう。鼓膜に穴が空いた状態を放置していると、入浴中に水が入ることなどで中耳炎を起こし、悪化してしまうことがあります。
耳小骨奇形
先天的な耳小骨の奇形があることで聴力に影響する病気です。耳小骨というのは、中耳にある小さな骨のことで、鼓膜から伝わった音の振動を増幅させる役割をします。耳小骨奇形の方は、振動の増幅がうまくできず、音が神経へ伝わりにくくなります。
片側だけの耳小骨奇形なら反対側が聞こえているため、生育がある程度進むまで気が付かないことも少なくありません。大抵の場合、手術で聴力の改善が可能です。また、補聴器の効果も出やすいため、聞こえの改善に補聴器を装用することも、選択肢の1つとなります。
耳硬化症
耳小骨の1つである「あぶみ骨」の動きが悪くなり、進行性の難聴をきたす病気です。音楽家のベートーベンは、耳硬化症で聴力を失ったとされています。
原因はわかっていませんが、白人や女性に多く、妊娠・出産を機に進行する方もいます。遺伝的な要因もあるようです。両側性で進行性の難聴、耳鳴りなどが主な症状です。
思春期頃から徐々に進行が始まり、何も治療をせず放っておけば10〜15年ほどでほとんど聞こえなくなってしまいますが、あぶみ骨を取り替える手術をおこなえば、劇的に改善が見込めます。
もし20代、30代など若くして耳の聞こえが悪化してきたとすれば、加齢による難聴には早すぎるため、検査を受けることを強くおすすめします。
まとめ
聞こえの悪化は、「老化」の代表的な症状だと多くの方が考えてしまいがちですが、加齢以外にも、聞こえに影響する病気はいくつかあります。「聞こえが悪い」「耳がこもっている気がする」と自覚したら、まずは検査をしましょう。回復できる難聴の場合もありますので、原因を調べることが重要です。
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記事投稿者
森崎アユム
「誰もが自分の体をいたわれる社会」を目指し、薬剤師として勤務する傍ら、わかりやすい情報発信を心がけています。
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記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■