日常的に大きな音がする環境に身を置いている場合には注意が必要です。長時間耳が大きな音にさらされると内耳は損傷し、永久的な難聴を引き起こす可能性があります。これは騒音性難聴として知られており、内耳の蝸牛(かぎゅう)という部分にある有毛細胞は、一度損傷してしまうと修復することができないので、予防の心がけが重要です。
大きすぎる音とは?
音はデシベル (dB) 単位で表されます。通常の呼吸は約10 dB、ささやき声やざわめきは20 dB、家庭での会話は約50 dBです。洗濯機はおおよそ70 dBで、芝刈り機は90 dB前後です。非常に大きな音には花火 (150 dB) 、散弾銃の爆音 (170 dB) が挙げられます。
厚生労働省のガイドラインには、従業員の健康を守るため、仕事の環境における騒音は85 dB (芝刈り機の音程度)を上限 とすることが示されています。
芝刈り、工事、自動車、飛行機などの屋外騒音や、レストラン、映画館、ジム、コンサート、スポーツイベントなどの屋内騒音によって、90から100デシベル以上の大きな騒音に断続的にさらされることになると言われています。音楽プレーヤーをイヤホンやヘッドホンを使って大音量で聞くことは、特に若者の間では一般的です。 騒音は聴覚聴覚に害を及ぼすので、騒音を避けたり、耳栓などの保護具を使用したりすることで難聴やその他の健康問題を防ぐことが重要です。
大きすぎる音とはどのくらい?
次の3つの要素の組み合わせが聴覚への危険性を左右します。どのくらいの音の大きさか、どのくらいの距離か、どのくらい音にさらされたか、これらの要素です。工事や建設現場、鉄道関係者、航空関係者は、大きな音に接する機会が多く難聴になるリスクが高いので注意が必要です。同様にドライヤーも100dBと大きな音を発しますので、美容師が毎日何時間もドライヤーを扱うとなれば、難聴になる可能性があります。
あなたがいる場所の音が大きすぎるサイン
コンサートなどのイベントに参加していて、友人に聞こえるように大声を出さなければならない、あるいは大声で話すように頼まなければならないなら、その場所の音は大きすぎます。目安としては1メートル以内に近づかずに友人の声が聞こえるかどうかです。叫んだり、大声で話したりする場所は、周りの騒音も含め、聴覚へダメージを与える可能性が高いといえます。
大きな音による影響
音が大きな場所から離れたときに、自分の声がこもったように聞こえたり、耳が詰まったように感じたら、聴覚にダメージを受けている可能性があります。耳の痛みや耳鳴りがする場合にはさらに注意が必要です。この時点でできることは、耳を休め、数日間はヘッドホンを使用しないようにしましょう。
聞こえを守る方法
聞こえを守るためにできることは何があるでしょうか?
周囲の騒音を測定するアプリ
周囲の状況を把握しましょう。職場の騒音レベルは安全でしょうか?耳障りと感じる騒音に繰り返して何度もさらされていませんか?該当する場合は、上記の厚生労働省のガイドライン を参考に上司または会社の人事担当者に相談することをおススメします。職場や家庭における周囲の騒音を測定には、音響測定アプリが役に立ちます。
耳栓やイヤーマフを持ち歩く
安価な発泡ウレタンの耳栓は、ポーチ、ポケット、車のコンソールボックス、機内持ち込み荷物などに入れて簡単に持ち運びできます。音楽コンサートに参加したり、スノーモービルな どのアウトドアの趣味を楽しんだりするときなど、大きな音に耳がさらされることがわかっているときには、使用することをおススメします。耳栓についての記事はこちら。
耳鼻咽喉科で聴力検査を受ける
難聴の疑いがある場合は、耳鼻咽喉科で聴力検査を受けることを検討してください。未治療の難聴は、認知機能の低下 、うつ病、社会的孤立などのリスクを高める可能性があります。
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
■英語版記事はこちらから
米国「HealthyHearing」2022年11月9日の記事「How loud is too loud?」(Joy Victory 寄稿)
https://www.healthyhearing.com/report/52694-How-loud-is-too-loud
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営
2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート -
記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■