まだ6月の始めなのに、すでに30度を超す真夏日を観測するなど、早くも昨年の大変暑く、夜寝苦しい夏の再来を予感させるような気候が続いています。夜よく眠ることはできていますか?もしいびきの問題を指摘されたことがあるなら、睡眠時無呼吸症候群に注意が必要です。良い睡眠を取ることは聞こえの健康にもつながります。睡眠と健康、そして難聴の関係について見ていきましょう。
難聴と睡眠時無呼吸との関係について、研究者たちは現在も引き続きその因果関係についての研究を重ねていますが、ここ数年間に発表されたいくつかの研究結果では、難聴と睡眠時無呼吸症候群との間の関係性が示唆されています。
そのひとつとして、米国国内の18~74歳のヒスパニック並びにラテン系の成人を対象に14,000人以上の参加者によって実施された研究では、肥満度指数が高く、いびきをかき、また重度の睡眠時無呼吸の症状がある参加者の間では難聴がより一般的な症状であることが判明しました。この研究では参加者たちは、睡眠時無呼吸症候群については、自宅で検査装置を使用して、また難聴については、インタビューや血圧検査といった検査を含み対面で聴力検査を受ける対面調査の形式で行われました。*1
2016年に韓国の研究者チームによって行われたもう一つの小規模研究では、重症の閉塞性睡眠時無呼吸を持つ人々の中で、最も低い酸素レベルを持つ人々では難聴がある可能性が高い傾向があることが分かりました。*2
睡眠時無呼吸とはどのようなものでしょうか?
睡眠時無呼吸症候群にはいくつかの種類がありますが、もっとも一般的なものは閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)です。*3 このタイプの睡眠時無呼吸は、気道の周りの筋肉や組織が弛緩して呼吸を妨げることで起こります。いびきをかき、息が切れることで頻繁に目が覚めてしまう原因となります。症状には、低呼吸(いびき)、眠っている間の息切れや息が止まる、昼間の眠気、朝の頭痛、過敏性、学習または記憶に関する問題、気分のむら、そして朝の目覚め時に喉が乾燥するなどといったことがあります。睡眠時無呼吸は身体の疲れにつながるだけでなく、心臓に負担をかけ、心臓病のリスクを高めることにもつながるため、治療の必要があります。
睡眠時無呼吸と難聴にはどのような影響があるのでしょうか?
睡眠時無呼吸が、直接難聴を引き起こすかどうかはまだ明らかになっていません。しかしながら、耳が正常に機能するためにはかなりの量の血液の供給が必要な一方で、睡眠時無呼吸は耳への血流を減少させます、また、長年にわたって大きないびきをかき続けることは、耳の敏感な有毛細胞を持続的に傷つける可能性もあり、それは有毛細胞の損傷で起こる永久的な難聴のうち最も一般的なタイプである感音難聴へとつながることがあります。
聴覚ケアの専門家は、循環器系の問題が難聴を引き起こす可能性があることを以前から知っていました。ある研究によれば、心疾患を持つ人はある種の聴覚障害を持つ可能性が50%以上高いことが指摘されています。米国糖尿病協会(ADA: American Diabetes Association)によると、糖尿病患者では、そうでない人に比較すると約2倍の割合で難聴を抱えています。喫煙者は、その習慣によって内耳の酸素レベルが枯渇することにより、難聴を発症する可能性が高くなるとされます。未治療の高血圧の症状がある場合にも、耳の中のキーンやジンジンといった聴覚異常の一つとしても知られる耳鳴りや、難聴の一因となることもあります。
どちらも人間関係に悪影響を及ぼす可能性があります
さまざまな種類の健康障害のリスクを高める可能性に加えて、難聴と睡眠時無呼吸の双方はそれぞれ、家族をはじめとする私たちの個人的な関係に深刻な悪影響を及ぼすことがあります。寝室を共にしている家族や近しい人は、睡眠時無呼吸症候群の症状に気づく最初の一人であることが多く、本人のいびきや寝ている間の落ち着きのなさといったことから十分な睡眠をとることができません。この状況に難聴の症状が重なると、フラストレーションの高まりとコミュニケーション不足といった状況へとつながるかもしれません。
症状に合わせた様々な治療方法があります
もし睡眠時無呼吸が疑われる場合は、かかりつけの医師、または専門の医療機関などにご相談ください。治療方法には、減量、禁煙といった生活習慣の改善、夜間寝ている間に無呼吸の状態になることを防ぐために鼻に装着したマスクから気道に空気を送るCPAP(シーパップ)装置、またはマウスピースや口腔内装置の使用、投薬、気道を塞ぐ部位を取り除く外科的治療などが含まれます。*4
聞こえに関して違和感や気になることがある場合は、耳鼻科にて今の聞こえを理解するための聴力検査を受けていただくことをお勧めします。聴覚ケアの専門家は必要な場合には、より良い聞こえにつながる補聴器などを勧める場合もあります。また、補聴器販売店のご紹介をはじめ、聞こえのサポートについてヘルシーヒアリングへご相談いただくことも可能です。
■参照サイト
*1: Sleep Apnea Is Associated with Hearing Impairment: The Hispanic Community Health Study/Study of Latinos
*2: Lowest Oxyhemoglobin Saturation May Be an Independent Factor Influencing Auditory Function in Severe Obstructive Sleep Apnea
*3: American Sleep Association
*4: 一般社団法人「日本呼吸器学会」
■本記事について
本記事は米国Healthy Hearingにて掲載された記事を、一般的な情報提供を目的として意訳、また日本国内の事情に沿うように加筆再編成したものです。本記事のコピーライトはhealthyhearing.com及びheatlhyhearing.jpに帰属します。本記事内に掲載された名称は、それぞれ各社の商標または登録商標です。また、出典や参照元の情報に関する著作権は、healthy hearingが指定する執筆者または提供者に帰属します。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート
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記事監修者
白石 君男先生
九州大学 名誉教授、福岡大学医学部 客員教授、一般財団法人曽田豊二記念財団 代表理事、医療法人永聖会 松田病院 言語聴覚士。■詳しいプロフィールを見る■