「難聴」と呼ばれる状態には、いくつかの種類があります。なかでも内耳に異常が見られるものは「感音難聴」です。こちらの記事では、感音難聴の特徴や、他の難聴との違いを解説します。また、主な原因や治療方法についても触れるため、ぜひご一読ください。 聞こえにかかわる耳は、複数の器官から成っており、早めに異変に気づいて対処することが大切です。以下でお伝えする情報を、必要なケアの参考にしてみてください。
感音難聴の基礎知識
聞こえに問題が生じる「感音難聴」は、難聴のなかでもどのような種類なのでしょうか。まずは、感音難聴の特徴のほか、「伝音難聴」や「混合性難聴」との違いについて解説します。
感音難聴とは?
「感音難聴」とは、主に内耳が正常に機能しないことで起こる難聴です。内耳は「蝸牛(かぎゅう)」と呼ばれる器官を持つ部位で、音を電気信号に変える有毛細胞があります。感音難聴では、内耳・蝸牛神経(聴神経)・脳などに何らかの障害があり、聞こえにくい状態となります。
他の難聴との違い
伝音難聴
「伝音難聴」は、外耳や中耳と呼ばれる部位に何らかの障害があり、聞こえにくい状態です。中耳とは、鼓膜・耳小骨・耳管などがある部位のこと。音を内耳まで届けられないのが難聴の原因となります。感音難聴に対して、原因となる部位が異なっています。
混合性難聴
「混合性難聴」は、感音難聴と伝音難聴が合併して起こる難聴です。いずれの症状が強くなるかは個人差があり、治療方法が異なります。感音難聴は主に内耳に原因がありますが、混合性難聴では内耳だけでなく外耳や中耳にも原因があります。
感音難聴の主な原因
ここでは、感音難聴の主な原因と考えられているものを取り上げます。医療機関の早期受診が勧められるケースもあるため、聴力に異常が見られるときは、まず医師の診察を受けましょう。
内耳に関係する病気
内耳に関係する病気が原因で感音難聴になることがあります。たとえば、「髄膜炎」「メニエール病」「聴神経腫瘍」などです。なお、急に起こる感音難聴は、主に「突発性難聴」や「低音障害型感音難聴」などがあります。突発性難聴とは、急に聞き取りにくくなるタイプの難聴です。一方、低音障害型感音難聴は、急に低音のみが聞き取りにくくなるタイプの難聴です。いずれも早めに対処すると症状が改善されやすいため、医療機関の早期受診を心がけましょう。
遺伝
感音難聴には、先天性のものもあります。生まれつき聴力に異常が見られる場合、なかには遺伝が原因となるケースも存在します。遺伝のほかには、ウイルス感染などの遺伝以外に原因があるケース、原因不明のケースなどが挙げられます。
加齢
加齢にともない聴力が低下する感音難聴は「老人性難聴(加齢性難聴)」と呼ばれます。老人性難聴の特徴は、左右の耳へ同時に発症することや、高い音から徐々に聞こえにくくなることなどです。症状は老化とともに少しずつ進行していきます。加齢が原因の難聴は、高齢者なら誰にでも起こり得る症状ですので、治療が難しい傾向にあります。聞こえでお悩みのときは、補聴器の利用をはじめとした対策をとりましょう。
音響外傷
音響外傷とは、長時間にわたり大音量にさらされて、内耳にある有毛細胞が傷つくことです。蝸牛で音を捉えられない状態となり、感音難聴が起こります。有毛細胞が壊れる前の軽度の場合は、耳の安静を図ることで時間の経過にともない有毛細胞が回復し、聴力が戻ります。しかし、重度の損傷では聴力が戻らないおそれがあるため注意が必要です。音響外傷は、大音量を発するイベント会場などで起こるほか、日常的にヘッドホンやイヤホンを使用している場合にも起こり得ます。後者は「ヘッドホン難聴」と呼ばれ、有毛細胞がしだいに傷つけられて起こるのが特徴です。若い人にも多く見られるため、オーディオ機器の音量を抑えるとともに、適度に耳を休めることが大切です。
薬の副作用
医薬品の副作用で、難聴やその他の症状が見られるおそれがあります。このうち、内耳の蝸牛に障害が起こる可能性があるのは、「ストレプトマイシン」や「カナマイシン」などのアミノグリコシド系抗菌薬です。難聴のほかに、耳鳴りが生じることも珍しくありません。
感音難聴の主な治療や対処の方法
もしも感音難聴と診断されたら、どのような治療の選択肢があり、日常生活で注意すればよいのでしょうか。ここでは、感音難聴の主な治療や対処の方法についてお伝えします。
原因となる病気の治療
耳鼻咽喉科を受診し、感音難聴の原因となる病気が見つかったら、適切な治療法を続けることになります。治療は薬物療法が中心ですが、原因の病気によって投与される医薬品が異なります。その際、生活習慣の改善も同時に指導されるのが一般的です。
人工内耳手術
人工内耳手術は、手術によって「人工内耳」を装用する方法です。人工内耳とは、マイクで入力された音を電気信号に変えて、聴神経に直接刺激する医療機器を指します。補聴器で十分な効果を得られない場合に聴覚を獲得できる方法で、術後はリハビリテーションを行いながら聞こえの訓練をしていきます。
ストレスの解消
ストレスが感音難聴の原因と考えられる場合には、日頃から上手にストレスを発散するための工夫が必要です。このような、ストレス解消への取り組みは「ストレスコーピング」と呼ばれます。誰かに相談する、趣味や好きなことに没頭する、外出をしてリフレッシュするなど、さまざまな方法を試してみましょう。
補聴器の利用
日常生活に支障を来す難聴が恒常的に続く場合、補聴器を検討します。補聴器を使えば、身の回りの方と会話しやすくなり、コミュニケーションを充実させられるのがメリットです。本人の聞こえの状態に合わせて補聴器を調整し、聴力をサポートすることで快適な日常生活を目指しましょう。
感音難聴による聞こえにくさは補聴器でサポートしましょう
今回は、感音難聴の基礎知識をお伝えしました。万が一聞こえに異常が見られたら、速やかに耳鼻咽喉科の病院の受診を検討しましょう。なかには、検査による早期発見と対処で改善が見込めるケースもあります。不安な点があれば専門家に問い合わせ、日常生活では補聴器などの手段も活用しながら、聞こえのお悩みをカバーできると理想的です。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
1. ポータルサイト「ヘルシーヒアリング(healthyhearing.jp)」の運営 2.「安心聞こえのネットワーク」連携サポート
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記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■