片耳の詰まった感じが長引いている場合は、耳の病気を発症している可能性があります。特に他の症状が現れているときは注意が必要です。本記事では片耳が詰まった感じがする原因や注意すべき症状、考えられる9つの耳の病気を解説します。
急に片耳が詰まった(こもった)感じがする原因
耳が詰まった感じのことを医学用語では耳閉感(じへいかん)といい、下記のいずれかに問題が発生した際に現れます。
項目 | 詳細 |
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外耳(がいじ) | 耳の穴の入口から鼓膜まで |
中耳(ちゅうじ) | 外耳と内耳をつなぐ部位 |
内耳(ないじ) | 平衡感覚や聴覚を司る器官がある耳の深部 |
外耳・中耳・内耳に問題が起きる原因は、感染症による炎症や気圧の変化、頭部外傷、ストレス、過労など多岐に渡ります。
急な片耳が詰まった感じと一緒に現れたときに注意すべき症状
片耳が詰まった感じが長引いているときは、その他の症状にも注意が必要です。他の症状が現れている場合は、次の章で解説する耳の病気を発症している可能性があるためです。
耳が詰まった感じに加えて、以下のような症状が生じている場合は注意してください。
- 耳が聞こえにくい
- めまいがしてフラフラする
- 耳鳴りがする
- 耳の中に痛みを感じる
- 吐き気がする
- 自分の声や呼吸が大きく聞こえる
- 自分の声が耳や頭に響く
上記の症状が見られる場合は、放置せず耳鼻咽喉科へ受診を検討しましょう。
急な片耳が詰まった感じから考えられる9つの耳の病気
耳の詰まった感じが長引いているのに加えて、他の症状も現れているときは、以下の病気を発症している可能性があります。
- 急性低音障害型感音難聴(きゅうせいていおんしょうがいがたかんおんなんちょう)
- メニエール病
- 突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)
- 急性中耳炎(きゅうせいちゅうじえん)
- 滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)
- 耳管開放症(じかんかいほうしょう)
- 耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)
- 外リンパ瘻(がいりんぱろう)
- 耳垢塞栓(じこうそくせん)
それぞれの耳の病気について解説します。
1.急性低音障害型感音難聴
急性低音障害型感音難聴は、内耳の機能低下によって発症する病気。急に症状が現れ、低音が聞こえにくくなる特徴があります。
項目 | 詳細 |
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原因 | 上気道(鼻から喉までの気道)の炎症やストレス、過労、睡眠不足 多くの場合は原因不明 |
症状 | 耳閉感や耳鳴り、難聴 |
検査 | 症状の診察や聴力検査 |
治療 | ステロイド薬(炎症を改善する薬)による薬物療法 |
後述するメニエール病に移行することがあります。症状が現れたら早期に耳鼻咽喉科に受診して、適切な治療を受けましょう。
2.メニエール病
メニエール病は、内耳のリンパ液が増加して浮腫(ふしゅ:むくむこと)が起きることで発症します。30〜50歳代の女性に多い病気。最初は片耳に症状が現れますが、進行すると両耳に生じます。悪天候をきっかけに症状が引き起こされることもあります。
項目 | 詳細 |
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原因 | 過労や睡眠不足、ストレス |
症状 | 耳閉感や耳鳴り、難聴、めまい、気分不快 |
検査 | 聴力検査、平衡機能検査、画像検査 |
治療 | 生活習慣の改善、利尿剤(りにょうざい:浮腫を軽減する薬)による薬物療法、中耳加圧療法(内耳の浮腫を取る治療) |
上記の治療で改善しないまたは症状が悪化する場合は、手術を実施するケースもあります。
3.突発性難聴
突発性難聴は、突然片耳の聴力が低下する病気です。40〜60歳代に多く見られ、なんの前触れもなく急に耳が聞こえにくくなるのが特徴です。
項目 | 詳細 |
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原因 | 血流の障害やウイルス感染が関係すると考えられているが、原因の詳細は不明 |
症状 | 難聴や耳閉感、耳鳴り、めまい、吐き気 |
検査 | 症状の診察、聴力検査、画像検査 |
治療 | ステロイド薬による薬物療法 |
放置すると聴力が回復しない可能性があります。突発性難聴が疑われたら、早期に耳鼻咽喉科で治療を受けることが推奨されます。
4.急性中耳炎
急性中耳炎は、中耳に炎症が生じることで発症する子どもに多い病気です。
項目 | 詳細 |
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原因 | 上気道の感染症により細菌が中耳に感染することで発症 |
症状 | 耳の痛み、耳閉感、鼻詰まりや鼻水、喉の痛み、咳 |
検査 | 耳鏡(じきょう:鼓膜を観察する器具)による診察、血液検査 |
治療 | 対症療法(たいしょうりょうほう:症状を緩和する治療)、抗菌薬(こうきんざい:細菌を破壊する薬)による薬物療法 |
重症であれば、鼓膜を切開して膿(うみ:細菌などの塊)を出す治療を実施します。症状の悪化を防ぐには、早期の治療が必要です。
5.滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは、中耳に液体がたまる病気です。中耳と鼻の奥をつなぐ耳管という管が正常に機能しないことで、中耳に液体がたまることで発症します。急性中耳炎の後に滲出性中耳炎へ移行することもあります。
項目 | 詳細 |
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原因 | 扁桃腺(へんとうせん)やアデノイド(鼻の中の突き当たりにあるリンパ組織)の肥大 風邪やアレルギー性鼻炎などによる鼻の症状 |
症状 | 耳閉感や難聴、耳鳴り |
検査 | 聴力検査やCT検査、ティンパノメトリー検査(鼓膜に圧を加えて鼓膜の動きを調べる検査) |
治療 | カルボシステインによる滲出液の排泄 |
上記の治療でも改善しない場合は、鼓膜を切開することもあります。重症化すると、難聴が悪化する可能性があるため早期治療が重要です。
6.耳管開放症
耳管開放症とは、普段は閉じているはずの耳管が、常に開いた状態になることで発症する病気です。ダイエットによる急激な体重減少により、引き起こされることもあります。
項目 | 詳細 |
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原因 | 体重減少、脱水、過労、妊娠 |
症状 | 耳閉感や自声強調、難聴、めまい、自声強調(じせいきょうちょう:自分の声が大きく聞こえたり頭や耳に響いたりする) |
検査 | 聴力検査、耳管機能検査、ティンパノメトリー検査 |
治療 | ルゴール液(炎症を緩和する薬)の耳管内噴霧、生理食塩水の点鼻、漢方薬による薬物療法 |
上記の治療で改善しない場合には、手術を実施することもあります。耳管開放症の症状は鼻すすりで緩和される傾向があるため、鼻すすりが癖になる患者さんが多いです。鼻すすりは、中耳炎の原因となるため注意してください。
7.耳管狭窄症
耳管狭窄症は、耳管が狭くなることで発症する病気です。耳管の狭窄によって、中耳と外耳の圧力が調整されなくなり症状が現れます。
項目 | 詳細 |
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原因 | 風邪などによる耳管の炎症や鼻副鼻腔炎(びふくびくうえん:鼻の内部にある空洞に炎症が起きている状態) |
症状 | 耳閉感、自声強調 |
検査 | 聴力検査、耳管機能検査、ティンパノメトリー検査 |
治療 | 耳管通気療法(じかんつうきりょうほう:咽頭からカテーテルを入れて中耳に向かって空気を入れる治療方法) |
耳管狭窄症は、滲出性中耳炎を合併することが多いです。早期に受診し適切な治療を受けることが重要です。
8.外リンパ瘻
外リンパ瘻は、内耳と中耳の間にある膜が破れてリンパ液が漏れる病気。
項目 | 詳細 |
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原因 | 交通事故や転倒などによる頭部外傷 鼻かみや飛行機下降、潜水による気圧の変化 |
症状 | 耳閉感、難聴、めまい、耳鳴り、平衡感覚障害 |
検査 | CT検査、CTP検査(漏れているリンパ液を調べる検査) |
治療 | 保存的治療(頭を30度挙上した安静状態でステロイドを投与する) |
上記の治療で改善しないまたは症状が悪化する場合は、破れた膜を閉じる手術を実施します。
9.耳垢塞栓
耳垢塞栓は、耳あかが耳の中で固まって詰まることで発症します。耳掃除により耳あかを奥まで押し込んでしまい、引き起こされることもあります。
項目 | 詳細 |
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原因 | 大量の耳あか |
症状 | 耳閉感、難聴、耳の痛み |
検査 | 多くの場合は耳の中の診察をするのみ |
治療 | 耳あかの除去または洗浄 |
耳あかが大量に溜まった状態で入浴すると、膨張して急激な難聴や痛みが起きることもあります。耳あかを奥に押し込んでしまうため、自己処理はせず耳鼻咽喉科で除去してもらいましょう。
片耳が詰まった感じが長引くときは早めの受診を
片耳が詰まった感じが続くときは受診を検討してください。一時的なものであれば、多くの場合は問題ありませんが、長引く際は耳の病気が原因であることが多いためです。
特に耳鳴りやめまい、難聴などをともなう場合は、内耳や中耳の病気が進行している可能性があります。片耳が詰まった感じが長引くときは、自己判断せず早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
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記事投稿者
ヘルシーヒアリング編集局
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記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■