花粉症の症状の1つとして、耳の聞こえが悪化することがあるのをご存じでしょうか?花粉症の代表的な症状は、鼻水、鼻づまり、くしゃみです。それだけでなく、じつは花粉症は、耳の聞こえにも影響を及ぼすこともわかっています。3〜5月は花粉症シーズン。もし、花粉症で耳の聞こえに違和感があるという方は、この記事を参考にしてください。
花粉症が耳の聞こえに影響する理由とは?
なぜ花粉症が耳の聞こえに影響するのでしょうか?その理由を聞こえのしくみをふまえて解説します。
耳のつくりと聞こえ
外耳は、「耳介(じかい)」と「外耳道(がいじどう)」からなり、音を集める部分です。
中耳は、鼓膜と3つの小さな骨(耳小骨:じしょうこつ)がつながっており、外耳で集められた音が鼓膜を振動させ、耳小骨を経て音の振動を増幅させて内耳に伝えます。中耳からは耳管(じかん)というものが伸びており、これは鼻と繋がっています。
内耳は、中耳から伝えられた音の振動を電気信号に変換して脳へと伝えます。
このような流れで、耳に入った音を脳が認識してくれるのです。
耳の聞こえに影響する理由
鼻の粘膜がむくみ、鼻がつまると、「耳管」を経由した耳の換気が悪くなってしまうことがあります。そうすると、「中耳」の圧力が下がり、鼓膜の振動がうまくいかなくなります。鼓膜がきちんと振動しないと、音をうまく内耳に伝えることができません。その結果耳がこもって聞こえが悪い、飛行機に乗った時のような不快な状態を引き起こします。
聞こえの悪化を防ぐには?
耳の聞こえを悪化させないようにするには、花粉症の対策・治療が必要であるといえます。とくに「鼻づまり」を起こさない・悪化させないことが大切です。
耳の聞こえを悪化させないための花粉症の対策としては、定番のマスクやメガネの着用がおすすめです。
日本医科大学の調査によると、通常のマスクで約70%、花粉症用のマスクで約84%も、鼻粘膜に付着する花粉の量を減らすことができました。また、メガネを着用すると、着用しない場合と比べて約40%、防護カバーのついた花粉症用のメガネを着用した場合だと約65%も、目の粘膜に付着する花粉の量を減らすことができたのです。
さらに、マスクの内側にインナーマスクを重ねることで、花粉の除去率はほとんど100%にまでなるという結果も得られています。
マスク、メガネをしっかり着用することで、花粉への曝露が減り、花粉症の発症を遅らせたり、症状の悪化を予防したりできるでしょう。
「花粉症の治療をした方がいい」とわかっていても、受診はせず市販薬で対処しているという方もいるかもしれません。
市販薬を使う場合には、「血管収縮薬」の点鼻液に注意してください。「ナファゾリン」「テトラヒドロゾリン」などといった成分が該当します。
血管収縮薬は鼻づまりに即効性があるため、毎日使いたくなってしまいますが、連用することで「薬剤性鼻炎」を起こす可能性があります。血管収縮薬は、鼻粘膜の血管を収縮させて腫れを抑える働きをします。この薬を使いすぎると、血管が薬に反応しなくなってしまうだけでなく、血管自体が太く変化し、鼻づまりが悪化してしまうことがわかっています。花粉症の時期だけ使用する分にはまず問題にならないと思いますが、ダニやハウスダストなどのアレルギーにて、一年中鼻がつまっている場合、血管収縮薬の点鼻薬を何年も使用し続けると、薬剤性鼻炎を起こす可能性が高まります。
市販の点鼻液に配合されていることが多いので、成分をよく確認し、連用しないようにしてください。すでに点鼻液の効果が得られにくくなっていると感じる方は、耳鼻科などで相談しましょう。
花粉症による難聴は一時的なものですが、耳の圧力の異常が慢性化すると徐々に聴力が落ちてしまう可能性があります。花粉症は毎年のことですので、シーズンの前からマスク・メガネの着用をする、治療薬を飲み始めるなど、対策をとりましょう。
まとめ
今回は、花粉症が耳の聞こえに影響を与えてしまう理由と、対策をご紹介しました。
花粉症になると、鼻づまりにより耳の圧力の調節に不具合を生じます。その状態が長く続くと、耳の聞こえが悪化してしまうかもしれません。
花粉症の症状を出さない・悪化させないために、今回ご紹介した対策をとってみてください。また、血管収縮薬を使っている方は、使い方を見直し、耳鼻科などでご相談ください。
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記事投稿者
森崎アユム
「誰もが自分の体をいたわれる社会」を目指し、薬剤師として勤務する傍ら、わかりやすい情報発信を心がけています。
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記事監修者
高島 雅之先生
『病気の状態や経過について可能な範囲で分かりやすく説明する』ことをモットーにたかしま耳鼻咽喉科で院長を務めている。■詳しいプロフィールを見る■